ワレリー・ブルメル

ワレリー・ブルメル（Валерий Николаевич Брумель, 1942年4月14日 - 2003年1月26日）は、ソビエト連邦を代表する伝説的な走高跳選手です。東シベリアのチタ州に生まれ、その類まれなる才能を開花させ、1960年代の陸上界に輝かしい足跡を残しました。

11歳から走高跳を始めたブルメルは、その天賦の才をいかんなく発揮し、急速に頭角を現します。そして、1961年から1963年のわずか3年の間に、驚異的な6回もの世界記録更新を達成。当時の走高跳界を席巻しました。

ブルメルの跳躍フォームは、ベリーロールと呼ばれるもので、その美しさから「人間衛星」とも形容されました。ベリーロールとは、バーに対して体を横向きにし、腹部をバーに近づけながら回転して跳び越える技術です。現在の主流である背面跳びとは異なり、より力強い跳躍が求められるスタイルでした。また、当時使用されていた競技場は、タータン素材ではなくアンツーカー（土）のトラックであり、着地地点も砂場という環境でした。そのような状況下で、ブルメルが打ち立てた2メートル28センチという記録は、彼の卓越した技術と身体能力を証明するものでした。

しかし、輝かしいキャリアの絶頂期にあった1965年、ブルメルは交通事故に遭遇し、重傷を負ってしまいます。幾度となく手術を繰り返しましたが、残念ながら以前のようなパフォーマンスを取り戻すことはできませんでした。それでも、彼は不屈の精神で競技への復帰を果たし、多くの人々に感動を与えました。

ブルメルは競技者としてだけでなく、作家としても才能を発揮し、『跳ぶことへの権利』という著書を出版しています。この本には、彼の競技人生における苦悩や葛藤、そして希望が綴られており、多くの読者に勇気を与えました。

ワレリー・ブルメルは、その圧倒的な記録と美しい跳躍フォーム、そして逆境に立ち向かう不屈の精神で、走高跳の歴史に名を刻んだ偉大なアスリートとして、今もなお多くの人々に記憶されています。

ワレリー・ブルメル - Olympedia（英語）

もう一度検索