ワーカーズ・ダイジェスト

ワーカーズ・ダイジェスト

津村記久子の小説『ワーカーズ・ダイジェスト』は、集英社から2011年3月25日に刊行された単行本に収録された作品です。同書には、2010年9月号から11月号まで『小説すばる』で連載された表題作「ワーカーズ・ダイジェスト」と、2008年4月号に掲載された「オノウエさんの不在」の二つの物語が収められています。装幀は名久井直子、装画は山城えりかが担当しました。本作は、2011年に第28回織田作之助賞を受賞し、2014年6月25日には集英社文庫版も刊行されています。

あらすじ

ワーカーズ・ダイジェスト

大阪のデザイン事務所で働く奈加子は、副業でライティングの仕事もこなしています。一方、東京の建設会社に勤務する重信は、12月のある日、大阪での打ち合わせに出席します。そこで奈加子と出会った二人は、偶然にも翌月の4日に32歳になることを知ります。別れた後も、二人は互いのことをふと思い出すのでした。

オノウエさんの不在

土木・建築関係の会社に勤めるサカマキは、かつて先輩のオノウエから仕事の指導を受けており、オノウエのキャリアを目標としていました。しかしある日、サカマキはオノウエが社内で冷遇されているという噂を耳にします。

主な登場人物

ワーカーズ・ダイジェスト

佐藤奈加子: デザイン事務所の社員。副業でライティングも行う。
佐藤重信: 建設会社の社員。

オノウエさんの不在

サカマキ: 土木・建築関係の会社の社員。
オノウエ: 土木・建築関係の会社の社員。

書評

作家の稲葉真弓は、本作を「湿っぽさのない文章に２人の生き方が表現されている」と評しました。文芸評論家の田中和生は、「日常の小さな喜びが丁寧に描かれている」と評価しています。小説家の西加奈子は、津村作品の魅力を「おもろい、かっこいい、シャイ」の三つを柱とし、その土台に「優しさ」があると述べ、本作もその魅力が発揮されていると評価しました。

大谷大学のウェブページでは、「働く男女の葛藤を積み重ねるように丁寧に描き出し、その中に現代の社会背景を浮かび上がらせている」と評されています。また、津村がこれまで働く女性の視点で書き続けてきたのに対し、本作では男性を主人公とした新たな挑戦が見られ、男女の視点が揃ったことで、現代日本社会の側面をより深く描き出していると評価されています。

『ワーカーズ・ダイジェスト』は、働く人々の日常と心の機微を丁寧に描き出し、読者に共感と感動を与える作品です。ぜひ手に取って、その魅力を味わってみてください。

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