ワースト (漫画)

『ワースト』

『ワースト』は、小室孝太郎によって描かれた日本のSF漫画で、1970年から1971年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載されました。この作品は、不良少年のカミソリ鋭二を中心とした壮大な物語が展開され、人類とワーストマンと呼ばれる恐ろしい存在との戦いを描いています。

物語の概要

第一部

連載の始まりは、カミソリ鋭二が廃倉庫の地下室に立て篭もっているシーンから始まります。彼は、長く続く雨の後に外に出て、無人の街と死体から生まれる夜行性の生物、「ワーストマン」と対峙します。このワーストマンは、殺されても再生するという恐るべき特性を持っており、鋭二は彼らと戦いながら仲間を集めます。彼は霞が関ビルを拠点とし生存者たちと共に立ち向かいますが、最終的に子どもを救おうとしたために命を落としてしまいます。

第二部

第一部から約6年後、鋭二の遺志を受け継いだ幼い腕白少年・前島卓が主人公に。卓は生存者の若きリーダーとして、ワーストマンの extermination を誓い、勉学に励みつつ資源を集めた砦に拠点を構えます。しかし、ワーストマンは環境に適応し進化を遂げており、人類はますます不利な立場に追い込まれていきます。東京には異様な植物も繁茂し、文明は失われてしまいます。危険を感じた卓は全員を連れて離島へ避難する決断を下し、仲間を失いながらも脱出を果たします。

第三部

何年も後、卓たちの世代はすでに年老いていましたが、ワーストマンの勢力は変わらず地球を脅かしています。卓に敵意を燃やす孫・力が登場し、彼の行動が悲劇を引き起こします。力はワーストマンの弱点を発見しますが、その時新たな氷河期が迫っています。最終的に、卓は氷河期に備えつつ、ワーストマン抹消のウイルスを散布しますが、世界は氷に覆われる運命に。数万年後、氷河期が終わりを告げる中、影が光の下に現れますが、果たしてそれが人類なのかワーストマンなのかは誰にもわからないという謎めいた終幕で物語は閉じられます。

解説

小室孝太郎の作品は手塚治虫の影響を色濃く受けており、その構成力とストーリーテリングには定評があります。特に本作は、3部構成というユニークな形式で描かれており、各部で異なる主人公が求めるものを通じて、作品に深みを与えています。人類とワーストの戦いが決着を迎えないまま終わるという描写や、未来の地球における存在の不確定さが感じ取れるラストシーンは、小室の才気を評価する要素の一つとされています。

単行本は1970年から1971年にかけて全4巻で刊行され、その後も再版されました。特に2019年に復刊ドットコムから出版された完全版には未収録のページや新たに描き下ろされたページが収められており、ファンにとっては貴重な一冊となっています。このように、『ワースト』は多くの読者に愛され続ける作品です。

もう一度検索