ワールドラグビーランキング

ワールドラグビーランキングとティア制度

ワールドラグビーランキングは、国際統括団体であるワールドラグビーが発表する、ラグビーユニオン男子および女子のナショナルチームの順位付けシステムです。主に国際試合であるテストマッチの成績をポイント化することで、各チームの現在の競争力を客観的に示しています。このポイント制ランキングは、2003年のラグビーワールドカップ開催に先立ち導入され、2016年からは女子チームのランキングも開始されました。

ただし、ラグビー界にはこのポイント制ランキングとは別に、「ティア（tier）」と呼ばれる階層区分が存在します。これは単なる現在の実力だけでなく、そのラグビー協会の歴史や伝統、国際的な貢献度なども考慮して定められるもので、ティア1、ティア2、ティア3の3段階に分かれています。この項目では、ポイント制ランキングの仕組みと、ティア制度の概要、そしてそれぞれの特徴について解説します。

ポイント制ランキング（男子）

男子ランキングにおけるポイントは、最低0点から最高100点の範囲で評価されます。世界のトップチームは概ね90点台で推移しており、これまでにニュージーランドが記録した96.57点が最高点となっています。

ランキングに参加するチームは、ワールドラグビーへの加盟後、テストマッチを10試合経験することで自動的に30ポイントが付与され、ランキング入りします。一方、テストマッチを含む国際試合から2年間遠ざかったチームはランキングから外れますが、再び試合を行えばポイントが復活し、その時点でのポイントに基づいてランキングに復帰します。

ランキングポイントの計算は「ポイント交換制」が採用されています。これは、試合の結果に応じて、両チーム間でポイントが移動する仕組みです。計算の基本となるのは、試合前の両チームのポイント差と試合結果です。また、ホームチームには有利となるよう、事前に3ポイントが加算される「ホームアドバンテージ」が考慮されます。ランキングポイントの低いチームが、より高いチームに勝利した場合、獲得できるポイントは大きく、ランキングが大きく変動する可能性があります。

ポイント交換の具体的な計算は複雑ですが、基本的にはホームアドバンテージを加味したポイントが低いチームから、高いチームへポイントが移動します。引き分けの場合もポイント移動は発生しますが、この場合もホームアドバンテージを考慮したポイントが高いチームから低いチームへポイントが移動します。ただし、ランキングポイントの差が一定以上（例：10ポイント以上）開いている場合、上位チームが下位チームに勝利してもポイントの交換が行われないという特例も存在します。また、過去には獲得できるポイントに上限が設定されていた時期もありました。

ランキングは原則として毎週月曜日に更新されますが、ラグビーワールドカップの開催期間中は、出場国の試合ごとにポイントが更新されることがあります。

新規にランキングに加わるチームへのポイント付与ルールは、時代によって変更されてきました。初期の頃は過去の成績に基づいて算出されていましたが、その後は一律のポイントからスタートする方式に変わっています。

ティア（階層制）

ティア制度は、現在のランキングポイントだけでなく、ラグビーの伝統や歴史的な実績、国際的な貢献度などを総合的に考慮してワールドラグビーが定めたナショナルチームの階層区分です。主に以下の3つの階層に分けられます。

ハイパフォーマンスユニオン（旧ティア1）: 世界の主要なラグビー強豪国が位置づけられる最上位のティアです。2023年5月のワールドラグビーの定款変更により、「ハイパフォーマンスユニオン」という名称に改められました。旧ティア1に属していたヨーロッパの「シックス・ネーションズ」参加6カ国と南半球の「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」参加4カ国に加え、近年目覚ましい成績を収めている日本を含む11カ国で構成されています。これらの国は、ワールドカップでのベスト4以上の経験を持つチームが多いですが、アイルランド（ランキング1位経験）、イタリア（決勝トーナメント進出経験なしだがGL3位常連）、そして日本（2019年W杯ベスト8）も含まれます。ハイパフォーマンスユニオン間の国際試合は定期的に組まれ、各国の協会はワールドラグビー総会でそれぞれ3票の議決権を持ちます。
ティア2: ラグビーの中堅国が位置づけられる階層です。2023年5月時点で12カ国が指定されています。ワールドカップには出場するものの、一般的にグループリーグを突破する実力を持つチームは少ないとされています。これまでに現ティア2から決勝トーナメントに進出したのはサモア、フィジー、カナダの3チームのみです。ティア2の国同士の国際試合は確保されますが、ハイパフォーマンスユニオンとの対戦機会は限られます。ワールドラグビー総会での議決権は、各協会の実績に応じて0票から3票が付与されます。例えば、2020年の会長選では日本が2票、サモアなどが1票を持っていました。ワールドカップの開催国はかつてティア1に限定されていましたが、2019年の日本大会はティア2（当時）での初開催となりました。
* ティア3: ラグビーの発展途上にある国々が位置づけられる階層です。ワールドカップに出場した経験がない、または直近の大会に出場していないが、ラグビーの強化に熱心に取り組んでいるチームが対象となります。さらに、ワールドカップ最終予選に出場するチームは「Development One」、それ以外のチームは「Development Two」に細分化されます。過去にワールドカップ出場経験を持つチーム（ジンバブエ、コートジボワール、チリなど）も含まれます。ティア3のチームは上位ティアとの対戦機会がさらに制限されます。ワールドラグビー総会での議決権は、個別の協会には与えられず、所属する大陸連盟が保有する議決権に委ねられます。

ティア制度は、単なるランキングポイントだけでなく、長期的な視点でラグビーの普及や発展を考慮した階層区分と言えます。下位ティアから上位ティアへ昇格するためには、ランキング成績に加えて、ラグビーへの貢献度や様々な取り組み、実績などが評価され、ワールドラグビーの承認を得る必要があります。過去にはアルゼンチン代表がティア2からティア1へ昇格した例があり、近年は日本代表もティア1入りが有力視されていましたが、2023年の定款変更により「ハイパフォーマンスユニオン」の一員となりました。

上位ティアに属する国は、テストマッチの相手確保、ワールドラグビー総会での議決権、収益分配、国際大会の開催地選定など、様々な面で優遇措置が与えられています。

女子ランキング

ワールドラグビーは、2016年から女子のナショナルチームについてもポイント制ランキングを発表しています。男子と同様に、テストマッチの成績に基づいてポイントが計算され、世界ランキングが決定されます。

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