ワールド・イズ・ノット・イナフ

映画『ワールド・イズ・ノット・イナフ』

『ワールド・イズ・ノット・イナフ』（原題: The World Is Not Enough）は、1999年に公開されたスパイアクション映画で、マイケル・アプテッドが監督を務める。これは、長寿シリーズである「ジェームズ・ボンド」の第19作にあたる。日本での上映は2000年2月5日に行われ、ボンドファンから高い評価を受けた。

ストーリー概要

物語は痛ましい事件から始まる。エージェント007こと、ジェームズ・ボンド（ピアース・ブロスナン）は、スイスの銀行家の元を訪れ、MI6から奪われた機密文書を取り戻す任務につく。この任務の背後には、石油王ロバート・キング卿が絡んでいる。ボンドは辛うじて銀行家から現金を回収するが、その直後、銀行家は自らの秘書である女暗殺者に命を奪われてしまう。

帰国後、キング卿がMI6を訪れ、金銭を確認している最中に、ボンドは彼の上着に偽のブローチが仕込まれていることに気づくが、その時はすでに遅く、キング卿は爆死してしまう。この爆破は、爆薬が混入された紙幣によるもので、ボンドはさらなる追跡を開始する。

次のターゲットは、キング卿の娘であり、キング卿の暗殺に関与したテロリスト「レナード」（ロバート・カーライル）に誘拐された経験を持つエレクトラ・キング（ソフィー・マルソー）に定められる。MI6は、彼女を次の標的と考え、ボンドはエレクトラをアゼルバイジャンで護衛することになるが、エレクトラはMI6を疑い、関係は複雑化する。

二人は石油パイプラインの建設現場で武装集団に襲われ、ボンドは彼らを退ける。襲撃の後、二人は加速し、肉体関係に至ることとなる。一方、ボンドはエレクトラを伴い、元KGBの実業家ヴァレンティン・ズコフスキー（ロビー・コルトレーン）が経営するカジノを訪れ、情報を探る。しかし、エレクトラの行動には疑念が残り、ボンドは彼女の警備主任がレナードと内通していることに気づく。

対決と陰謀

エレクトラはレナードと共謀し、旧ソ連製の核弾頭を奪取しようと画策している。ボンドは、核弾頭が操作されていることを察知し、レナードとの対決を迫られる。レナードは、彼がエレクトラの過去の誘拐の張本人であることを告げ、「生きる実感がなければ、死んだ方がマシだ」と言い放つ。ボンドは核弾頭を阻止するため、クリスマス・ジョーンズ（デニス・リチャーズ）と共に奮闘する。

結局、核弾頭はキング社の石油パイプラインに仕掛けられ、ボンドたちは爆発を防ぐため急いで対応する。しかし、ボンドの推測通り、エレクトラはレナードと結託していたことが明らかになる。彼女の真の目的は、父とMI6への復讐であった。

結末と意義

物語は、ボンドがレナードと最終決戦を繰り広げるにつれてクライマックスを迎える。ボンドがエレクトラを射殺し、Mを救出するシーンは緊迫感に満ちている。最終的には、核ミサイルの危機を切り抜けたボンドが、クリスマスと共に一時的な安息を得る場面で終わる。

映画の特徴

本作は、シリーズの中でも特によく練られたストーリーと複雑なキャラクター関係が魅力で、ハードなアクションが続く一方で感情的な部分も描かれている。音楽はデヴィッド・アーノルドが担当し、冷たさや哀愁を催す楽曲で物語の雰囲気を引き立てた。また、主題歌はアメリカのロックバンド、ガービッジによるものである。

『ワールド・イズ・ノット・イナフ』は、ボンドの新しい一面や、作品のキャラクターたちが持つ陰謀や痛みを描いたものであり、評価されるべき作品となった。

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