ワールド・オン・ファイア (イングヴェイ・マルムスティーンのアルバム)

2016年にリリースされたイングヴェイ・マルムスティーンの通算20枚目にあたるスタジオ・アルバムが『ワールド・オン・ファイア』（World On Fire）である。この作品は、彼のキャリアにおいて記念すべき20作目という節目にあたり、前作『スペルバウンド』に続く形式で制作された。

本作の最大の特徴は、前作同様に専任のリード・ヴォーカリストを迎えず、イングヴェイ・マルムスティーン自身が全てのリード・ヴォーカルを担当している点にある。全11曲が収録されているが、そのうち8曲は彼の代名詞とも言えるギター・インストゥルメンタル楽曲であり、残りの3曲「World On Fire」、「Lost In The Machine」、「Soldier」において、彼の歌声を聴くことができる構成となっている。

音楽性としては、イングヴェイが長年追求してきたクラシック音楽の影響を受けた様式美と、アグレッシヴかつ圧倒的なスピードとテクニックで奏でられるギタープレイが全編にわたり前面に押し出されている。まさに「イングヴェイ・ワールド」と呼ぶべき、彼の音楽哲学と徹底したこだわりが凝縮された内容と言えるだろう。

本作の制作には、中心人物であるイングヴェイ・マルムスティーン自身が、ギター、ベース、ヴォーカル、キーボードに加え、シタールやチェロといった多岐にわたる楽器を担当している。彼をサポートする形で、アディショナル・キーボードにはニック・マリノヴィック、ドラムにはマーク・エリスが参加している。また、作品のサウンドを完成させる重要な役割として、キース・ローズがミキシング・エンジニアを務めている。

日本国内で初回生産されたCD盤には、特典としてジャケット・ステッカーが封入された。これは日本のファンにとっては嬉しいコレクターズアイテムと言えるだろう。また、日本盤ジャケットに巻かれた帯には、アルバムの内容を端的に、そして熱く表現した解説文が掲載されている。そこには、「圧倒的な速さと情熱的な演奏で聴衆を魅了する孤高の存在、イングヴェイ！！」「メタルシーンの頂点に君臨し続ける王者の魂と風格が全編に漲る渾身の一枚！！」といった賛辞が並んでいる。

この帯解説はさらに、「メタル・シーンきってのギター・ヒーローとしての地位を不動のものとしている王者、イングヴェイ・マルムスティーンの約4年ぶりとなる新作」であることを強調している。そして、彼のトレードマークである長きにわたり貫かれてきた様式美の世界観と、アグレッシヴで超絶的なギタープレイを大々的にフィーチャーし、文字通り「イングヴェイ・ワールド」に徹頭徹尾こだわり抜き、一切の隙を与えずに疾走し続ける王者のパワーが漲る快作である、と本作を高く評価している。

全体を通して、『ワールド・オン・ファイア』は、イングヴェイ・マルムスティーンというアーティストの揺るぎない個性、超絶技巧、そして音楽への情熱が色濃く反映された作品である。自身のヴィジョンを完全にコントロールするためヴォーカルも自ら担当し、多数のインスト曲でギタープレイを存分に披露するというスタイルは、まさに彼にしか成しえないものであり、このアルバムが彼のキャリアにおける重要な位置を占める理由となっている。ギターインストの比率が高いことは、彼の音楽性の根幹がギターにあることを改めて示しており、ファンにとっては彼の真髄を味わえる一枚と言えるだろう。

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