ヴァイオリンソナタ第38番 (モーツァルト)

ヴァイオリンソナタ第38番 ハ長調 K.403(385c)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲したヴァイオリンソナタの一つであり、その中でも完成に至らなかった作品です。ケッヘル目録ではK.403(385c)として登録されており、通常、偽作とされるK.55からK.61の諸作品を除けば、モーツァルト自身が手がけたヴァイオリンソナタとしては第30番にあたります。

概要

このソナタが作曲された詳しい経緯は明らかになっていませんが、モーツァルトが新妻であるコンスタンツェと共に演奏を楽しむために書かれたと考えられています。作曲時期は1784年頃、ウィーンでのことと推測されています。モーツァルトが手がけた未完のヴァイオリンソナタ群の中でも、比較的完成度が高い部類に入ります。

自筆譜にはフランス語で「第1ソナタ、最愛の妻のために（Première Sonate pour ma chère Épouse）」と記されており、これは結婚直後に作曲された可能性を示唆しています。

当初3つの楽章から構成される予定でしたが、特に第3楽章はわずか20小節の断片で途絶えています。この未完部分は、モーツァルトの死後、友人であり音楽家であったマクシミリアン・シュタードラーによって補筆され、演奏可能な形に整えられました。

しかしながら、こうした事情もあり、このソナタが演奏会などで取り上げられる機会は残念ながら多くありません。

構成

補筆された状態では、3楽章構成となっており、全曲の演奏時間はおよそ12分です。

第1楽章 アレグロ・モデラート
第2楽章 アンダンテ
この楽章は、劇的な強弱の変化（デュナーミクの転換）、半音階的な進行、そして短調へと傾く色彩が特徴的です。
第3楽章 アレグレット
* モーツァルト自身の筆はわずか20小節で中断しており、それ以降はシュタードラーによる補筆部分です。

この未完のソナタは、完全な形で残されなかったものの、同時期に書かれた他の作品と同様に、モーツァルト円熟期の様式を垣間見せる貴重な作品と言えるでしょう。

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