ヴァイオリンソナタ第39番 (モーツァルト)

概要

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの手によるヴァイオリンソナタ第39番 ハ長調 K.404(385d)は、残念ながら未完に終わった作品群の一つです。この作品はケッヘル目録においてK.404(385d)という番号が付与されていますが、一般的に知られるK.55からK.61までの偽作（その中にはヘルマン・フリードリヒ・ラウパッハ作とされるK.61も含まれます）を除いて数えると、実際には彼の31番目のヴァイオリンソナタにあたります。

作曲背景と時期

このソナタは、モーツァルトがウィーンに滞在していた1788年頃に作曲されたと考えられています。その詳しい動機は明らかになっていませんが、彼の妻であるコンスタンツェが演奏するピアノのために書かれた可能性が推測されています。

このソナタは、アンダンテとアレグレットという二つの楽章で構成されていますが、いずれの楽章も完全な形には至らず、未完のまま残されました。

楽章の作曲時期については研究者間で議論があります。例えば、第1楽章のアンダンテ（わずか18小節）は、同時期に作曲された4手ピアノのための変奏曲（K.501）との類似性が指摘されており、また楽器指定が当時の主流であったチェンバロではなく、モーツァルトが好んで用いたフォルテピアノとなっていることから、1788年の作品と推定されています。一方、第2楽章のアレグレット（24小節）については、1785年から1786年にかけて作曲されたとする説も存在します。このことから、これら二つの楽章は、必ずしも同時期にまとめて構想・作曲されたものではなく、別々に手掛けられた断片である可能性も示唆されています。

構成と特徴

前述の通り、このソナタは以下の二つの楽章から成り立っています。

第1楽章 アンダンテ (18小節)
第2楽章 アレグレット (24小節)

どちらの楽章も極めて短いながら、音楽的には二部形式で書かれています。未完のまま残された断片であるため、全曲を通して演奏した場合の時間は非常に短く、およそ3分程度と見積もられています。

補筆と異説

モーツァルト自身の手で完成を見なかったこのソナタですが、後にヨハン・アントン・アンドレによって補筆され、演奏可能な形に整えられました。

また、資料によっては作曲時期や楽章の帰属について異なる記述が見られます。例えば、古いペータース社の楽譜では、このソナタの作曲年が1782年とされており、さらに最初の楽章（これは入力情報にはない「アレグロ・モデラート」とされる楽章と、現存する「アンダンテ」を指すと考えられます）はモーツァルト自身によって作曲されたものの、最後のアレグレットはモーツァルト以外の誰かによるものとされているなど、研究の進展や資料の解釈によって、この未完のソナタに関する情報は多様な見解が存在することを示しています。

未完の断片ながら、モーツァルト後期の創作の一端を垣間見せる作品と言えるでしょう。

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