ヴァスィリキーウの戦い

ヴァスィリキーウの戦い：キーウ攻防戦における激戦

2022年2月26日、ロシアによるウクライナ侵攻の初期段階において、キーウ州の要衝であるヴァスィリキーウ市を巡り、ロシア軍とウクライナ軍の間で激しい戦闘が繰り広げられました。この戦いは、キーウ攻勢の一環として行われ、ロシア軍は空挺部隊を投入して市の掌握を試みましたが、ウクライナ軍の抵抗により阻止されました。

戦闘の経過

2月26日早朝、ロシア空挺軍の第98親衛空挺師団は、キーウの南約40キロメートルに位置するヴァスィリキーウ市付近に着陸し、市の重要なインフラであるヴァスィリキーウ空軍基地の占拠を試みました。この作戦に対し、ウクライナ軍は直ちに反撃を開始し、両軍の間で激しい市街戦が展開されました。

アメリカやウクライナ当局の発表によると、戦闘開始直後の午前1時30分頃、ウクライナ空軍のSu-27戦闘機が、ロシア軍の空挺部隊を輸送していたイリューシンIl-76輸送機を撃墜しました。さらに、午前3時20分頃には、2機目のIl-76輸送機が、ヴァスィリキーウ近郊のビーラ・ツェールクヴァ上空で撃墜されました。これらの撃墜は、ロシア軍の空挺作戦に大きな打撃を与えたとみられます。

ヴァスィリキーウ市長のナタリア・バラシノヴィッチ氏は、この戦闘で200人以上のウクライナ兵士が負傷したと発表しました。しかし、その後、ウクライナ軍が市の軍事空軍基地と主要道路へのロシア空挺部隊の攻撃を撃退し、市内の状況は沈静化したと述べています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、ウクライナ軍は戦闘翌朝には市内をパトロールし、ロシア軍の残存兵力を掃討する作戦を展開したとされています。

2月27日早朝には、ロシア軍のミサイルがヴァスィリキーウの石油貯蔵所を攻撃し、大規模な火災が発生しました。この攻撃は、ウクライナのインフラを標的としたロシア軍の戦略を浮き彫りにしました。

4月3日には、中部航空管区司令部、訓練センター、NAU大学の建物に対してロケット弾攻撃が行われ、民間人が負傷するという事件も発生しました。この攻撃では、ミサイルの一部がウクライナ防空部隊によって撃墜されています。

4月18日には、キーウ州知事オレクサンドル・パヴリュク氏が、ヴァスィリキーウ地区のインフラに対してロケット弾攻撃が行われたと報告しました。これに対し、ヴァスィリキーウ市長は、朝のビデオメッセージで「わが国の防空部隊のおかげで、すべては順調だ」と述べ、市民に冷静な対応を呼びかけました。一方、ロシア国防省は、「キエフ地方のヴァシルキウ居住区で大きな弾薬倉庫が破壊された」と発表し、双方の発表には食い違いが見られました。

戦闘の意義

ヴァスィリキーウの戦いは、ロシア軍がキーウを包囲し、制圧しようとした初期段階において、ウクライナ軍が示した抵抗の象徴的な戦いの一つです。この戦いにおいて、ウクライナ軍は、ロシア空挺部隊による奇襲的な攻撃を撃退し、首都キーウへの侵攻を阻止する上で重要な役割を果たしました。また、この戦闘は、ロシア軍の作戦における脆弱性と、ウクライナ軍の決意を明らかにした出来事として、国際社会に大きな影響を与えました。

この戦いで見られたウクライナ軍の粘り強い抵抗は、その後のウクライナ全土での戦いにおける士気を高めることにもつながり、またロシア軍の当初の計画の修正を余儀なくさせた要因の一つとも考えられます。

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