ヴァランセ (チーズ)

ヴァランセは、フランス中部のベリー地方を代表するシェーブルチーズです。その名の通り、ヴァランセという地名に由来しています。

このチーズの最大の特徴は、頂点をカットした四角錐、つまりピラミッド型をしている点です。この形状は、古くからこの地方でシェーブルチーズが作られていたことを示唆しており、ヴァランセ城で生産されていた歴史に繋がります。

ヴァランセ城といえば、フランス革命期の著名な政治家、タレーランが所有していたことでも知られています。タレーラン自身もチーズ愛好家であったと伝えられており、彼の時代以前から、すでにヴァランセ城ではピラミッド型のシェーブルチーズが作られていたとされています。その原型は、同じくシェーブルチーズとして有名なプーリニ＝サン＝ピエールであるという説もあります。

興味深いことに、ヴァランセの形状に関する逸話があります。ナポレオン・ボナパルトのエジプト遠征の失敗後、このピラミッド型がエジプトを連想させ、ナポレオンの不興を買ったため、頂点が切り取られて現在の形になったというのです。事実かどうかは定かではありませんが、チーズの歴史に彩りを添えるエピソードといえるでしょう。

ヴァランセの味わいは、さわやかな酸味と、やわらかくしっとりとした食感が特徴です。若いチーズは酸味が強く感じられますが、熟成が進むにつれて酸味は穏やかになり、代わりに甘みとナッツのような香りが増してきます。この複雑な風味の変化もヴァランセの魅力です。

その風味から、ヴァランセは辛口の白ワインとの相性が抜群です。特に、フルーティーで軽やかな白ワインであれば、チーズの風味をさらに引き立てます。また、レーズンパンやリンゴ、サラダなどとも相性は良く、様々な料理に合わせることができます。

木炭粉で覆われた外見もヴァランセの特徴の一つです。これは、匂い消しの効果があると考えられています。上品な外観と、熟成による風味の変化、そして様々な料理との相性の良さから、ヴァランセは、フランスの伝統と洗練が凝縮されたチーズと言えるでしょう。

一口食べれば、ベリー地方の豊かな自然と歴史が感じられる、そんなチーズです。ぜひ、様々な料理と合わせて、その奥深い味わいを堪能してみてください。

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