ヴァルデマー2世 (デンマーク王)

ヴァルデマー2世：バルト海の覇者から失意の王へ

ヴァルデマー2世（Valdemar II, 1170年 - 1241年3月28日）は、デンマーク王（在位：1202年 - 1241年）として、その生涯において栄光と挫折の両方を経験しました。父はヴァルデマー1世（大王）、兄にクヌーズ4世を持つ彼は、当初シュレースヴィヒ公としてそのキャリアをスタートさせました。兄の死後、王位を継承し、その治世はバルト海地域におけるデンマークの勢力拡大と、その後の失地という二つの大きな転換点によって特徴づけられます。

治世初期の成功

1202年にデンマーク王となったヴァルデマー2世は、その治世の前半において目覚ましい成功を収めました。彼は北ドイツへと勢力を拡大し、1219年にはエストニアを征服。これにより、バルト海南部におけるデンマークの覇権を確立しました。この時期のヴァルデマー2世は「勝利王」または「征服王」として称えられました。

失意への転落

しかし、デンマークの勢力拡大は、バルト海地域への進出を狙うドイツ勢力にとって脅威となりました。1223年、ヴァルデマー2世は、シュヴェリーン伯ハインリヒ1世によって長男ヴァルデマー若王と共に誘拐され、3年間幽閉されるという事態に見舞われます。解放の条件として、彼は多くの領土を失い、ハンザ同盟に対して広範な商業特権を認めることを余儀なくされました。これにより、デンマークの海外領土はリューゲン島とエストニアを残すのみとなり、ヴァルデマー2世は失地回復を図って北ドイツを攻撃しますが、多大な犠牲を払うことになります。

その他の事柄

ヴァルデマー2世の治世は、デンマーク国旗の起源に関する伝説とも結びついています。1219年のエストニアとの戦いで、赤地に白い十字を描いた旗が舞い降り、それを掲げたデンマーク軍が勝利したという物語が伝えられています。しかし、実際のデンマーク国旗のデザインが確認されるのは、14世紀半ばのヴァルデマー4世の時代であり、この伝説が史実であるかは定かではありません。

家庭

ヴァルデマー2世は二度の結婚をしました。最初の妻はボヘミア王オタカル1世の娘ダウマー（マルケータ）で、彼女との間に二人の子を儲けました。その一人がヴァルデマー若王です。二度目の結婚はポルトガル王サンシュ1世の娘ベレンガリアとで、彼女との間にはエーリク4世、ソフィア、アーベル、クリストファ1世という四人の子供がいます。特に、長男ヴァルデマー若王が父に先立って亡くなったため、王位は次男のエーリク4世が継承することになりました。

死

1241年、ヴァルデマー2世は70歳でその生涯を閉じました。彼の死は、デンマークの歴史において一つの時代の終わりを告げました。彼の治世は、バルト海地域におけるデンマークの盛衰を象徴しており、その後の歴史に大きな影響を与えました。

まとめ

ヴァルデマー2世は、その治世においてバルト海地域におけるデンマークの覇権を確立したものの、誘拐事件や領土喪失といった大きな挫折も経験しました。彼の生涯は、中世ヨーロッパの政治的なダイナミズムと、王権の盛衰を物語る上で重要な一例と言えるでしょう。

参考資料

百瀬宏 他『世界各国史21 北欧史』山川出版社、60-61頁。
武田龍夫『物語 北欧の歴史』中央公論社、1993年。
“Valdemar Sejr, 1170-1241”. danmarkshistorien.dk (30 May 2012). 2023年1月8日閲覧。
Petersen, Leif Inge Ree (2010). "Battle of Bornhöved". In Rogers, Clifford J. (ed.). The Oxford Encyclopedia of Medieval Warfare and Military Technology. Vol. 1. Oxford University Press.

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