ヴィアンナ・ダ・モッタ国際音楽コンクール

ヴィアンナ・ダ・モッタ国際音楽コンクールは、ポルトガルの首都リスボンでかつて開催されていた国際的な音楽コンクールです。

創設とその目的

このコンクールは、高名なポルトガル人ピアニストであり作曲家でもあったジョゼ・ヴィアナ・ダ・モッタ（José Vianna da Motta）の偉業を称え、その名を後世に伝えることを目的として創設されました。セケイラ・コスタ（Sequeira Costa）氏の発案により、1957年に第一回が開催されています。

開催地と事務局

コンクールの開催地は一貫してポルトガルのリスボンでしたが、運営のための事務局は遠く離れたアメリカ合衆国のカンザスに置かれていました。これは国際的なコンクールとしてはやや珍しい形態と言えます。

部門構成

本コンクールでは、主にピアノ部門が実施されました。ダ・モッタ自身がピアニストであったことから、ピアノに重点が置かれていたと考えられます。しかし、その歴史の中で、ヴァイオリン部門も二度だけ開催された記録が残っています。

コンクールの経緯と課題

創設から間もない1964年には、世界の主要な音楽コンクールが加盟する国際音楽コンクール連盟（World Federation of International Music Competitions）に加盟するなど、当初はその活動は順調に進んでいるように見えました。

しかし、ヴィアンナ・ダ・モッタ国際音楽コンクールはその審査において、非常に高い水準を求めたためか、しばしば第一位の入賞者が選出されない、いわゆる「空位」となる回が目立つようになりました。この傾向は特に後期の開催において顕著となり、1999年から2010年にかけては、実に11年間もの長きにわたり第一位の受賞者が存在しないという極めて異例の事態となりました。

運営の困難と終焉

運営面でも困難に直面していきました。日本の著名な楽器メーカーが長年にわたり主要なスポンサーとしてコンクールを支援していましたが、運営資金の確保や組織的な維持が難しくなったと推測されます。最終的には、コンクールの公式ウェブサイトすら更新が滞る状況に陥り、2010年の開催を最後に、事実上その歴史に幕を下ろすこととなりました。

日本人参加者の成果

多くの日本人音楽家もこのコンクールに参加しましたが、最高位を獲得したのはピアニストの江尻南美氏ただ一人でした。

特殊な表彰システム

このコンクールには、第一位が空位となった場合に、それ以下の順位（第二位、第三位など）を繰り下げて最大第七位まで表彰するという独特のシステムが採用されていました。これにより、一位不在の場合でも複数の入賞者が顕彰される機会が設けられていましたが、公式記録によっては、第四位から第七位までの詳細な記載が見られないケースもあったようです。

ヴィアンナ・ダ・モッタ国際音楽コンクールは、その高い芸術的理想を追求する姿勢ゆえに運営上の困難を抱え、残念ながら終了してしまいましたが、その開催期間中、多くの若手音楽家にとって重要な登竜門の一つとして機能しました。特にピアノ界に貢献した国際コンクールの一つと言えるでしょう。

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