ヴィオレッタ (映画)

『ヴィオレッタ』とは

『ヴィオレッタ』は、2011年に公開されたフランスの映画で、原題は「My Little Princess」です。この作品は、女優エヴァ・イオネスコが自身の複雑な幼少期の経験をもとに、母と娘の葛藤を描いたストーリーであり、彼女にとって初の長編劇映画監督作となります。

ストーリーの概要

物語は1970年代のフランスに設定されています。主人公ヴィオレッタは12歳の少女で、母親は元画家のアンナです。彼女たちは窓から墓地が見える家に住んでいますが、家庭の環境はネグレクト気味で、母親はほとんど帰宅せず、曾祖母との関係もあまり良好ではありません。ある日、アンナはヴィオレッタを自宅のスタジオに招き入れ、モデルとして写真撮影を始めます。

最初はその経験を楽しんでいたヴィオレッタですが、アンナは次第に過激な衣装やセッティングでの撮影を要求し、彼女に対し厳しい要求を持つようになります。ヴィオレッタは学校でモデルとしてのポージングを試みることが多くなり、周囲から注意を受けることも増えていきますが、アンナはその反応を意に介しません。

アンナは娘にカメラを贈ったエルンストの支持を受け、彼女の写真を続けて撮影しますが、後には撮影内容が過激を極め、ヌードやトイレでの姿を撮影してしまうことも。家は次第に豊かになり、アンナの芸術活動は評価されますが、その一方で曾祖母は不安を抱えるようになります。曾祖母はアンナの撮影を悪魔的と見なし、止めさせようとしましたが、母親の強い反発にあい、ただ神に祈ることしかできませんでした。

ヴィオレッタの葛藤

その後、ヴィオレッタはロンドンへ行く機会があり、そこでシド・ヴィシャスの招待を受けます。彼に特別扱いされ、初めての刺激を受けますが、撮影の際に母親からヌードになるように求められたことで、強く反発します。これをきっかけに、彼女は撮影を拒否することが多くなります。しかし、普段着は露出の多い衣服となり、同年代の子供たちからいじめを受けることも増えます。

アンナはその状況を「凡人たちの嫉妬」と問題視しない一方で、ヴィオレッタは次第に心の中に大きな葛藤を抱えることになります。彼女の拒否がエスカレートし、母親との関係は悪化の一途をたどることになりました。その矢先、曾祖母が亡くなると、アンナは児童虐待の告発を受け、親権が剥奪される危機に直面します。

結末とメッセージ

物語が進むにつれて、ヴィオレッタは自分が受けた影響や、母親が抱える過去のトラウマを知ることになります。彼女が自分のヌードが雑誌に載っているのを知ったとき、彼女は自分の存在への疑問を抱くようになり、ついには非行行為を犯してしまいます。

最後に、施設に収容された彼女は、自身のアイデンティティに対する不安や母との断絶を抱えています。面会に来た母親に振り向くこともなく、草原を走り抜ける姿で物語は幕を閉じます。『ヴィオレッタ』は、芸術の名のもとに行われる過剰な表現や、自身の存在意義を問い直すメッセージを投げかける作品として、多くの議論を呼び起こしました。

批評と反響

本作品は、第64回カンヌ国際映画祭に出品され、上映に際して児童ポルノとの関係性が議論されるなど、複雑な反響を呼びました。国によってはレイティング問題が浮上し、日本では特に厳しい目が向けられました。最終的にはR15+のレイティングが適用され、特定の年齢層以外は鑑賞できないことが決まりました。

本作は、母娘の絆や虐待の構造を鋭く描写し、それに対する観客の理解と共感を誘う作品であるとともに、映画が持つ影響力について考えさせられる作品でもあります。

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