ヴィキングル・オラフソン

ヴィキングル・オラフソン：アイスランドが生んだ国際的なピアニスト

1984年2月14日生まれのヴィキングル・オラフソンは、アイスランドを代表するピアニストとして世界的な活躍を見せています。彼の音楽遍歴は、名門ジュリアード音楽院での研鑽から始まります。ロバート・マクドナルド氏に師事し、卒業後はジュリアード・オーケストラやアイスランド交響楽団などとの共演を重ね、演奏活動の幅を広げていきました。

才能は演奏活動にとどまりません。オックスフォード大学やレイキャヴィーク大学においてマスタークラスを開き、後進の育成にも力を注いでいます。2016年にはアイスランドの音楽フェスティバル「Vinterfest」のディレクターを務めるなど、音楽界への貢献も顕著です。

国際的なキャリアの転換期となったのは、2016年の名門ドイツグラモフォンとの専属契約でしょう。それ以降、彼はほぼ毎年アルバムをリリースし、世界各地で精力的に演奏活動を行っています。日本にも度々来日し、ソロリサイタルだけでなく、庄司紗矢香氏との共演やNHK交響楽団との協演など、多様な舞台で聴衆を魅了してきました。2018年には、庄司紗矢香氏、ヴラディーミル・アシュケナージ氏指揮のNHK交響楽団と共演し、メンデルスゾーンのヴァイオリン、ピアノと弦楽合奏のための協奏曲を演奏したことは、記憶に新しいところです。

彼のレパートリーは多岐に渡ります。モーツァルト、シューマン、ブラームス、ラヴェル、グリークといった古典派からロマン派の作品はもちろん、ジョン・クーリッジ・アダムスやエドマンド・フィニスといった現代作曲家の作品にも積極的に取り組み、幅広い音楽性を示しています。オーケストラとの協演から室内楽、ソロリサイタルまで、その活動は多様性に富んでおり、常に新しい音楽体験を提供し続けています。

コロナ禍においては、コンサートの中止が相次ぐ中、BBCラジオ4で無観客ライブを毎週配信。毎回100万人以上のリスナーを獲得するなど、その影響力は世界中に広がっています。

音楽一家に育まれた才能

ヴィキングル・オラフソンの音楽への情熱は、彼の家族環境からも垣間見ることができます。両親は共にベルリン芸術大学でピアノと作曲を学び、音楽一家に育った彼は幼少期から音楽に囲まれた環境で育ちました。10歳の誕生日には、叔母からプレゼントされたモーツァルトとウェーバーのクラリネット五重奏曲集をきっかけに、音楽への関心を深めていったと語っています。

両親は共に著名なピアニスト、エミール・ギレリスを高く評価していましたが、マウリツィオ・ポリーニについては意見が分かれました。父親はポリーニの演奏を好んでいましたが、母親はやや客観的すぎる演奏だと感じていました。ヴィキングルは父親の意見に賛同しながらも、母親の意見も理解できたと述べており、両親の異なる音楽観に触れながら成長してきたことがうかがえます。

12歳の頃には、新聞配達で貯めたお金でカラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のベートーヴェン交響曲全集を購入。ベートーヴェンのピアノソナタに取り組んでいた当時、母親は交響曲を聴くことがピアノソナタの理解に役立つと考えていたそうです。ヴィキングルはベートーヴェンの交響曲を年代順に聴き込み、特に第1番ハ長調を気に入って、1年間で100回以上聴いたと自身のブログに綴っています。

ディスコグラフィーと受賞歴

ヴィキングル・オラフソンは、自主レーベルからリリースした初期の作品から、ドイツグラモフォンからの作品まで、数多くのアルバムを発表しています。彼の演奏は高い評価を得ており、2019年には英グラモフォン・マガジン誌の「アーティスト・オブ・ジ・イヤー」を受賞、同年BBCミュージック・マガジン誌では『ヨハン・セバスチャン・バッハ』で「Instrumental Album of the Year」を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。2022年には、権威あるショック賞音楽部門も受賞しました。

新たな音世界の探求

ヴィキングル・オラフソンは、既存の枠にとらわれず、常に新しい音楽表現を探求し続けるピアニストです。彼の演奏は、テクニックの高さだけでなく、音楽への深い理解と情熱が感じられ、聴く者を魅了します。これからも彼の活躍から目が離せません。

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