ヴィスワ作戦

ヴィスワ作戦：ポーランドにおけるウクライナ系住民の強制移住

ヴィスワ作戦（ポーランド語: Akcja "Wisła"）は、第二次世界大戦終結直後の1947年に、ポーランド共産主義政権によって実行された、ウクライナ系住民に対する強制移住政策です。ポーランド南東部に居住していたボイコ人、レムコ人を含む約20万人のウクライナ系住民が、ポーランド西部や北部の旧ドイツ領土へ強制的に移住させられました。作戦名は、ポーランドを流れるヴィスワ川に由来します。

背景

作戦の公式な目的は、ポーランド南東部で活動していたウクライナ蜂起軍 (UPA) の鎮圧でした。UPAは、共産主義政権側のポーランド人民軍部隊を攻撃し、ポーランド人民間人を殺害していました。直接の引き金となったのは、1947年3月28日にカロル・スヴェルチェフスキ将軍がUPAによって殺害された事件です。事件直後、政権はウクライナ人とレムコ人の強制移住を決定しましたが、実際には、遅くとも1947年1月には作戦の準備が開始されていたことが明らかになっています。

強制移住と鎮圧

強制移住は、ステファン・モッソー将軍が指揮する2万人規模の作戦集団によって実行されました。この集団には、ポーランド人民軍、国内治安部隊、国家警察、公安部の職員が含まれていました。作戦は1947年4月28日に開始され、14万人から15万人のウクライナ人とレムコ人が家を追われました。

移住は非常に迅速かつ乱暴に行われ、住民にはわずかな時間しか準備が与えられず、持ち出せる所持品も限られていました。すし詰めの貨車で移送され、食料の提供は不規則で、衛生状態も劣悪でした。移動中には暴力が振るわれ、死亡者も出ました。

ウクライナ人のインテリゲンツィアとみなされた聖職者たちは、ヤヴォジュノ中央労働キャンプに送られました。この施設は元々アウシュヴィッツ強制収容所の支所であり、約4千人が収容され、過酷な尋問と暴行を受け、約200人が死亡しました。また、ウクライナ民族主義者組織 (OUN) の構成員は、見せしめ裁判にかけられ、処刑されました。

収容所送りを免れた人々は、「回復領」と呼ばれる旧ドイツ東部領土に、人口の10%を超えないように分散配置されました。ヴィスワ作戦は公式には1947年7月31日に終了しましたが、最後の強制移住は1952年まで続きました。

作戦の影響

ヴィスワ作戦の結果、ポトカルパチェ県などの地域では人口が激減しました。UPAは人的資源を断たれ、ポーランドの共産主義勢力に対する武力闘争を維持できなくなりました。その後、UPAの残党は西ヨーロッパやアメリカ合衆国に逃れました。

ヴィスワ作戦前後の強制移住を含めると、ポーランドにおける住民の強制移住は3つの段階を経て行われました。第1段階は第二次世界大戦終結時、第2段階はヴィスワ作戦、第3段階は1951年のポーランドとソ連間の国境線修正時でした。

ポーランドのレムコ人

1957年から1958年にかけて、故郷に帰還したレムコ人は約5千家族でした。2002/2003年の国勢調査では、レムコ人と自己申告した人は約5,800人でしたが、今日、ポーランドには10万人近いレムコ人が存在すると推定されています。

後年の評価

ヴィスワ作戦は、20世紀のポーランドとウクライナの関係に残された深い傷跡の一つです。1990年、ポーランド上院はヴィスワ作戦を非難する決議を採択し、ウクライナ最高議会もポーランドにおけるウクライナ人に対する不正義の是正に向けた一歩として認めました。2002年には、ポーランド大統領がヴィスワ作戦について遺憾の意を表明し、この作戦をヴォルヒニアにおけるポーランド人虐殺の報復とする考え方を否定しました。2007年には、ポーランドとウクライナの大統領が共同でヴィスワ作戦を人権侵害として非難しました。

ヴィスワ作戦は、複雑な歴史的背景を持つ悲劇であり、両国間の関係に深い影を落としていますが、近年では、歴史的な評価が進み、和解への努力も続けられています。

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