ヴィラート (空母)

インド海軍軽空母「ヴィラート」：巨人としての艦歴

「ヴィラート」(INS Viraat) は、インド海軍において長年にわたり活躍した軽空母であり、同軍の象徴的な存在でした。その歴史は、イギリス海軍の航空母艦「ハーミーズ」の購入から始まります。1984年に退役した「ハーミーズ」は、インド海軍によって購入され、大規模な改修工事を経て1987年に「ヴィラート」として生まれ変わりました。艦名はサンスクリット語で「巨人」を意味し、その名にふさわしく、インド海軍の空母戦力の中核を担う存在となりました。

就役後、「ヴィラート」は幾度となく近代化改修を受けました。1993年には浸水事故に見舞われましたが、修復を経て現役復帰。その後も、レーダーの更新、推進システムの改良、防空システムの強化、通信システムの近代化など、継続的な改修が行われました。これらの改修により、「ヴィラート」は長年にわたり高い運用能力を維持し続けました。

特に1999年から2001年にかけて実施された改修は、艦の性能を大幅に向上させるものでした。推進システムの改良、新型レーダーや通信システムの導入、そしてバラクSAMといった先進的な防空システムの追加は、「ヴィラート」の戦闘能力を飛躍的に向上させました。この大規模改修を経て、2001年に現役復帰した「ヴィラート」は、インド海軍における唯一の空母として、その役割を担い続けました。

しかし、インド海軍は空母戦力の近代化を推進しており、ロシアから「アドミラル・ゴルシコフ」を購入し、「ヴィクラマーディティヤ」として就役させる計画を進めていました。この計画に伴い、「ヴィラート」の退役時期が当初予定の2012年から延期されることとなります。「ヴィクラマーディティヤ」の就役が遅れたため、「ヴィラート」は空母戦力のギャップを埋める役割を担いつつ、2008年から2009年にかけてさらなる近代化改修を受けました。

「ヴィクラマーディティヤ」が2014年に就役し、「ヴィクラント」の就役も間近に迫る中、遂に「ヴィラート」は2017年3月6日に退役しました。長きにわたるインド海軍への貢献に幕を閉じました。退役後は、博物館船やホテルへの転用が検討されましたが、実現せず、解体されることとなりました。2020年9月に解体のため移送されましたが、その後博物館船としての保存を求める声が上がり、解体は保留されました。しかし、最終的に解体されることが決定し、2021年7月までに完全に解体されました。

「ヴィラート」は、インド海軍の空母戦力の歴史において重要な役割を果たした艦艇です。その活躍は、インド海軍の成長と発展を象徴するものであり、インド海軍史に名を刻む存在となりました。長きにわたる任務遂行と近代化改修を経て、インド海軍の空母戦力の発展に貢献した「ヴィラート」の物語は、後世へと語り継がれるべきでしょう。数々の困難を乗り越え、インド海軍の空母戦力の中核として活躍した「ヴィラート」の功績は、決して忘れられることはないでしょう。

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