ヴィルヘルム・エルンスト (ザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ大公)

ヴィルヘルム・エルンスト・フォン・ザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ：激動の時代を生きた大公

ヴィルヘルム・エルンスト・フォン・ザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ（1876年6月10日 - 1923年4月24日）は、1901年から1918年までザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ大公を務めた人物です。1903年からは君主号をザクセン大公と改称しました。

生涯

ヴィルヘルム・エルンストは、大公世子カール・アウグストとその妻パウリーネの長男として生まれました。父が早くに亡くなったため、1901年に祖父の死後、大公位を継承しました。オランダ王家出身の祖母ソフィーから莫大な財産を受け継ぎ、当時のドイツ王侯の中でも屈指の富豪でした。軍隊教育を受けた後、ドイツ帝国軍の歩兵連隊司令官に任命されています。

結婚と家族

ヴィルヘルム2世の妹マルガレーテとの縁談は実現しませんでしたが、1903年にカロリーネと結婚。しかし、カロリーネは1905年に早世しました。1910年にはフェオドラと再婚し、3男1女をもうけました。子供達は、ゾフィー・ルイーゼ、カール・アウグスト、ベルンハルト・フリードリヒ、ゲオルク・ヴィルヘルムです。

文化事業

大公は自身の財産を文化事業に投資しました。芸術的センスに欠けると評されながらも、彼の治世下では「新しいヴァイマル」と呼ばれる文化的潮流が生まれました。ハンス・オルデ、ハリー・ケスラー伯爵、アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド、アドルフ・ブリュットといった芸術家や建築家をヴァイマルに招聘。イェーナ大学の改築やヴァイマル宮廷劇場の改築も行われました。しかし、次第に保守的なプロイセン人を重用するようになり、ヴァイマルは民族主義的な芸術運動の中心地となっていきました。社会学者のマックス・ヴェーバーからは「嘲笑の的」と評されることもありました。

退位と亡命

1918年のドイツ革命により、ヴィルヘルム・エルンストは退位を余儀なくされました。退位後、彼はシュレージエンのハインリハウ城に隠棲し、1923年にその地で亡くなりました。退位補償金としてアルシュテット城の財産目録に記載された全ての所蔵品を与えられ、ハインリハウ城に持ち込まれました。1921年にはドルンブルク城をゲーテ協会に寄贈しています。

オランダ王位継承者としての側面

ヴィルヘルム・エルンストは、母方の祖母がオランダ王女ソフィーであったため、1897年から1909年までオランダ女王ウィルヘルミナの推定相続人でした。しかし、彼がオランダ王位を継承することでドイツの影響下に入ることを危惧する声も上がりました。1909年にウィルヘルミナ女王にユリアナ王女が誕生したことで、ザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ家がオランダ王位を継承する可能性は消滅しました。

人物評

ヴィルヘルム・エルンストは、気難しく怒りっぽい性格であったと伝えられています。ハリー・ケスラー伯爵からは「病的な人物」、ヒルデガルト・フォン・シュピッツェンベルク男爵夫人からは「全く無作法で愚かな公子」と評されました。オランダでも嫌われ者であり、外見についても否定的な評価が残っています。

ヴィルヘルム・エルンストは、文化事業への貢献と保守的な政策の推進という二つの側面を持つ複雑な人物でした。彼の生涯は、激動の時代における君主の役割と、その限界を示唆していると言えるでしょう。

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