ヴィルヘルム5世 (ヘッセン＝カッセル方伯)

ヴィルヘルム5世：ヘッセン＝カッセル方伯、激動の時代を生き抜いた「不変伯」

ヴィルヘルム5世（1602年2月14日 - 1637年9月21日）は、ヘッセン＝カッセル方伯として、17世紀のヨーロッパで起きた三十年戦争の時代を生きました。彼は「不変伯」という異名を持ち、その生涯は領土と宗教をめぐる紛争、そしてプロテスタントの擁護に彩られています。

生涯：領土紛争と宗教対立の時代

1602年、ヴィルヘルム5世はモーリッツ（学者伯）とその最初の妃アグネスの息子としてカッセルに生まれました。彼の人生は、領土と宗教をめぐる複雑な問題に深く関わることになります。

1604年、ヘッセン＝マールブルク方伯ルートヴィヒ4世が死去。彼は、ルター派からカルヴァン派への改宗を禁じる条件で、ヘッセン＝カッセルとヘッセン＝ダルムシュタットによる領土分割を遺言しました。しかし、父モーリッツはヘッセン＝マールブルク全域を併合し、さらにカルヴァン派への改宗を強行したため、ヘッセン＝カッセルとヘッセン＝ダルムシュタットの間で紛争が勃発します。この結果、1627年にモーリッツはヴィルヘルム5世に譲位せざるを得なくなり、ヘッセン＝マールブルクの一部を割譲することになりました。

三十年戦争と亡命

三十年戦争において、ヴィルヘルム5世はプロテスタントのスウェーデンと同盟を結び、神聖ローマ皇帝フェルディナント2世とのプラハ条約への署名を拒否しました。この決断が、ヘッセン＝カッセルを戦火に巻き込むことになります。カトリック軍に敗れたヴィルヘルム5世は亡命を余儀なくされ、1637年9月21日に亡命先のレーアで死去しました。

彼の死後、妃アマーリエ・エリーザベトが幼い長男ヴィルヘルム6世の摂政としてヘッセン＝カッセルを統治しました。

子女

アマーリエ・エリーザベトとの間には12人の子供がいましたが、成人したのはわずか4人でした。

アグネス（1620年 - 1621年）
モーリッツ（1621年）
エリーザベト（1623年 - 1624年）
ヴィルヘルム（1625年 - 1626年）
エミーリエ（1626年 - 1693年） - トゥアール公アンリ・シャルルと結婚
シャルロッテ（1627年 - 1686年） - プファルツ選帝侯カール1世ルートヴィヒと結婚
ヴィルヘルム6世（1629年 - 1663年） - ヘッセン＝カッセル方伯
フィリップ（1630年 - 1638年）
アドルフ（1631年 - 1632年）
カール（1633年 - 1635年）
エリーザベト（1634年 - 1688年） - ヘルフォルト女子修道院長
ルイーゼ（1636年 - 1638年）

結論：「不変伯」の遺産

ヴィルヘルム5世は、激動の時代において、自らの信念を貫き、プロテスタントの擁護に尽力しました。領土紛争や宗教対立に翻弄されながらも、その姿勢は「不変伯」の名にふさわしいものでした。彼の生涯は、17世紀ヨーロッパの複雑な政治情勢と、一人の君主が置かれた苦難を物語っています。

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