ヴェア (紋章学)

ヴェア（Vair）

ヴェアとは、紋章学においてリスの毛皮を表現するティンクチャー（色彩の種類）を指します。このモチーフは「毛皮模様」というカテゴリーに属し、特に中世の紋章において重要な意味を持っています。ティンクチャーとは、紋章の基本的な構成要素であり、原色や金属色、毛皮模様の総称です。

語源と歴史的背景

「ヴェア」という語は、ラテン語の「varius」、すなわち「まだら」という意味の言葉に由来しています。この言葉が発展し、フランス語の「vair」、さらには中英語の「veir」および「vaire」となり、「まだらの毛皮」を示すようになりました。特に中世において、ヴェアは支配者たちによって高く評価され、その美しさと希少性から貴族の外套の裏地に頻繁に使用されました。

ヴェアのデザインと特性

ヴェアは、青灰色と白色の美しい模様が特徴のリスの毛皮に由来しています。この毛皮は、背中と腹の部分が異なる色合いを持ち、カップ状に縫いつけられ、青灰色と灰白色の交互の模様を形成します。ヴェアのデザインは、これらの色を基にした線画と彩色のアプローチで表現されています。

一般的にヴェアは、アージェント（銀色）とアジュール（青色）の2色を基にデザインされますが、他にも多様な色の組み合わせが存在しており、それぞれ異なる名称が付けられています。アージェントやアジュール以外の色を使用したヴェアは「ヴェアリー（Vairy）」と呼ばれ、具体的にはどの金属色と原色が用いられているのかに基づいて記述されます。

ヴェアの表現方法

ヴェアは、非常に多様な表現方法を持っています。最も古い記録では、曲線や水平線を交互に描くことで表現されており、それらは「vair onde」や「vair ancient」として文書に記されています。このような表現は、中世の貴族の外套の裏地に見られることがあります。

ヴェアの変形

ヴェアは3つの基本的な変形が存在し、それぞれが独立したテイストを持っています。これらの変形は、各ピースの位置を変更したり、反転させたりすることで形成されます。

• - カウンター・ヴェア（Counter-vair）：通常のヴェアの配置が異なり、青と白のピースが背中合わせになるように反転されます。
• - ヴェア・イン・ペイル（Vair in pale）：カウンター・ヴェアの形を持ちつつ、同じ向きに並ぶ青と白のピースが縦に配置されます。
• - ヴェア・アンプワント（Vair-en-pointe）：縦に交互に配置された青と白のピースが、波状のパターンを形成します。

これらのデザインは、歴史的な記録や貴族の紋章において重要な役割を果たしました。ヴェアの多様性と美しさは、紋章学の重要な一部として現代にも受け継がれています。

関連項目

• - 紋章学
• - リスの毛皮

参考

• - コウブチ紋章資料館
• - 紋章学総合サイト
• - 中世ヨーロッパの風景 「紋章について」

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