ヴェネツィア領クレタ

ヴェネツィア領クレタ（カンディア王国）

ヴェネツィア領クレタは、ヴェネツィア共和国が1205年頃から1669年までクレタ島を支配した時代のことを指します。当時、クレタ島はカンディアとして知られており、その首都は現在のイラクリオンであるカンディア/カンダクスでした。

この時代は、現代ギリシア史学ではヴェネトクラティアまたはエネトクラティアと呼ばれています。フランスの歴史学者フレディ・ティリエは、ヴェネツィア領クレタを「中世に存在した、唯一の正真正銘の植民地」と評しました。

歴史

ヴェネツィアによる征服

1204年、第4回十字軍によってビザンツ帝国が崩壊すると、クレタ島はモンフェッラート侯ボニファッチョ1世の手に渡りました。しかし、彼はすぐにその権利をヴェネツィア共和国に売却しました。1205年、ヴェネツィア軍はクレタ島を占領しましたが、ジェノヴァ共和国の脅威を排除するまでには1212年までかかりました。

クレタ島はヴェネツィア本国の地区区分にちなんで名付けられた6つの地区に分割され、首都カンディアはCommune Veneciarumとして直接統治されました。14世紀初頭には、地区区分は現代ギリシア共和国の県とほぼ同じ境界を持つ4つに再編されました。

ヴェネツィア支配の確立

ヴェネツィアはクレタ島を利益率の高い東方貿易の拠点とし、植民者に封地を分配しました。また、食料と原材料の生産に特化した農業生産体制を敷き、近代の植民地帝国とも似た生産と流通の分業体制を構築しました。クレタ島の輸出品はコムギとデザートワイン（マルヴァジア）が主でした。

ヴェネツィアのクレタ島支配は、現地人の敵意に遭遇して当初から問題を抱えていました。正教会信徒の現地ギリシア人による反乱が頻発し、ニカイア帝国がこれを支援しました。

ヴェネツィアに対する反乱

1207年から1360年代のサン・ティートの反乱まで、18回の反乱が発生しました。その後も時折反乱やトルコ人の襲撃が発生しましたが、クレタ島は大きく繁栄し、ヴェネツィアの統治を通じてルネサンスの影響を受けました。その結果、ギリシア世界では他に比類のない芸術と文学の復興がもたらされました。

オスマン帝国の侵攻とクレタ戦争

1571年のオスマン帝国によるキプロス征服の後、クレタ島はヴェネツィアに残された最後の主要海外領土となりました。ヴェネツィアとオスマン帝国はクレタ島の支配権を巡って長く悲惨なクレタ戦争（1645年-1669年）を戦いました。オスマン帝国はクレタ島を占領しましたが、首都カンディアは1669年まで持ちこたえ、最終的に陥落しました。

ヴェネツィア領クレタの終焉

ヴェネツィアはモレアス戦争の最中にカンディアの奪還を試みましたが失敗し、最終的にソウダ島、グラムヴサ島、スピナロンガ島の3つの島も1715年にオスマン帝国の手に落ちました。

経営

ヴェネツィア政府がクレタ島で作り上げた体制は、ヴェネツィア自体の体制をモデルとしていました。クレタ島は公（総督）の下、大評議会、元老院、十二人委員会、国家検察官などによって支配されました。

社会

ヴェネツィアは領有直後からクレタ島の首府カンディアを中心に入植者を送り込みました。ヴェネツィアの支配が強固に推し進められた港湾都市では、本国から派遣されてきた総督や入植者が社会秩序を維持しました。

ヴェネツィア人とギリシア人の関係

14世紀以降、カンディアなどの都市部でもギリシア人の居住者が増加して多数派を占めるようになり、ヴェネツィア人入植者とギリシア人家系との間の通婚も時代と共に進行しました。しかし、「ヴェネツィア人」と「ギリシア人」という区分を超えた「クレタ人」というアイデンティティが共有されることはありませんでした。

経済

ヴェネツィア領クレタの経済の特徴は、本国の食糧供給とワインを中心としたモノカルチャー的な商品作物の生産に特化した農業生産でした。ヴェネツィアはクレタ島を商品作物輸出地へと変貌させ、近代植民地帝国にも似た分業体制が形成されました。

クレタ島の輸出品

クレタ島の輸出品はコムギとデザートワイン（マルヴァジア）が主でした。クレタ産コムギはヴェネツィアにおける穀物消費量のほぼ3分の1を占めました。また、クレタ・ワインは西ヨーロッパの消費者たちの間で名声を高めました。

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