ヴェラ・コンスタンチノヴナ

ロシア大公女ヴェラの生涯：波乱に満ちた人生と慈善活動

ヴェラ・コンスタンチノヴナ大公女（1854年 - 1912年）は、ロシア皇帝ニコライ1世の曾孫にあたる、波乱に満ちた人生を送った女性です。サンクトペテルブルクで生まれ、幼少期はロシアで過ごしましたが、父であるコンスタンチン大公がポーランド副王に任命されたことをきっかけに、一家はワルシャワに移住しました。

しかし、ヴェラは気難しい性格で、しばしば激しい癇癪を起こすなど、周囲を困らせることも少なくありませんでした。そのため、両親はヴェラを、コンスタンチンの姉であるヴュルテンベルク王妃オリガに預けることにしました。

9歳の時、ヴェラはドイツのシュトゥットガルトに移り、子供を持たなかったヴュルテンベルク王カール1世と王妃オリガのもとで養育されることになります。公には、ヴェラの病気を治療するためという名目でしたが、実際には、ロシア宮廷における彼女の病状を隠蔽する目的があったと推測されています。

当初、ヴェラはホームシックになり、養父母に対しても暴力を振るうなど、問題行動を繰り返しました。しかし、オリガ王妃は献身的にヴェラを支え続け、次第にヴェラは落ち着きを取り戻していきます。カール1世王も、ヴェラを散歩に連れて行ったり、聖書を読んで聞かせたりするなど、愛情を注いで育てました。

ヴェラは内気で恥ずかしがり屋な性格でしたが、知性とユーモアのセンスに恵まれていました。外見は太いブロンドの髪を短く切り、ずんぐりとした体格で、一般的な女性像とは異なっていました。

1871年、ヴェラは正式にカール1世夫妻の養女となり、1874年にはヴュルテンベルク王家の分家出身のオイゲンと結婚します。結婚式には、ヴェラの伯父にあたるロシア皇帝アレクサンドル2世も出席しました。しかし、アレクサンドル2世はヴェラの魅力をあまり感じていなかったようです。

ヴェラとオイゲンは幸せな結婚生活を送っていましたが、オイゲンはわずか3年後、落馬事故（実際には決闘）により若くして亡くなってしまいます。23歳で未亡人となったヴェラは、再婚することなく、ヴュルテンベルクで暮らし続けました。

ヴェラは故国ロシアへの帰国を選択する代わりに、ヴュルテンベルクで慈善活動に身を投じます。彼女は30以上の組織を後援し、『ヴェラの家』という貧窮した女性のための避難所を設立したり、診療所を開設したりするなど、多くの社会貢献活動を行いました。また、シュトゥットガルトの聖ニコラス教会の建設にも関わっています。

晩年、ヴェラは健康を害し、舞踏病を発症していたと考えられています。彼女は度々ロシアを訪問し、1896年にはニコライ2世の戴冠式にも出席しました。娘2人は、それぞれシャウムブルク＝リッペ家の男性と結婚しました。

年を重ねるごとに、ヴェラの容姿は小柄で太った丸い顔になり、男性のような風貌になっていきました。彼女は近視で鼻メガネをかけており、周囲からは一風変わった人物と思われていましたが、家族や友人からは愛されていました。

しかし、ヴェラはロシアの親戚とは次第に疎遠になっていきました。政治的には親ドイツ派であり、ロマノフ家の反ドイツ的な姿勢を受け入れることができませんでした。信心深いヴェラでしたが、1909年には正教からルター派に改宗するという衝撃的な行動に出ます。

1912年、ヴェラはシュトゥットガルトで生涯を閉じました。彼女はロシア大公女として、そしてドイツで慈善活動に励んだ女性として、複雑で魅力的な人生を送りました。彼女の人生は、時代の波に翻弄されながらも、強い意志と優しさで生き抜いた、一人の女性の物語として、後世に語り継がれるべきでしょう。

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