ヴェルナー・アーバー

ヴェルナー・アーバー氏は、1929年6月3日に生まれたスイスの著名な微生物学者、および遺伝学者です。科学史において特筆すべき業績として、制限酵素の発見が挙げられます。この画期的な発見は、遺伝子組み換え技術をはじめとする現代分子生物学の発展に極めて重要な役割を果たしました。彼の功績は高く評価され、1978年にはアメリカ合衆国の微生物学者であるハミルトン・スミス、およびダニエル・ネイサンズと共に、ノーベル生理学・医学賞を授与されています。

アーバー氏の学究生活は、1949年から1953年にかけて、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で化学と物理学を修めたことから始まります。大学卒業後、1953年末にジュネーヴ大学で電子顕微鏡法の助手として研究キャリアをスタートさせましたが、まもなく研究対象をバクテリオファージに移しました。この時期に、欠損ラムダプロファージ変種に関する重要な論文を執筆し、1958年にはジュネーヴ大学から博士号を授与されました。

博士号取得後、アーバー氏は1958年夏に渡米し、南カリフォルニア大学にてジョー・ベルターニ氏と共にファージ遺伝学の研究に深く関わりました。この米国滞在期間は彼にとって非常に実り多いものであり、特にカリフォルニア大学バークレー校のギュンター・ステント氏、スタンフォード大学のジョシュア・レダーバーグ氏、マサチューセッツ工科大学のサルバドル・ルリア氏といった著名な研究者たちからの指導を受ける機会を得ました。貴重な学びを得た数週間を経て、1959年末にはジュネーヴ大学からの招聘を受け、1960年初頭にスイスへと帰国しました。

ジュネーヴ大学に戻ったアーバー氏は、物理学研究所の地下に設けられた研究室を拠点に、精力的に研究活動を展開しました。また、研究と並行して、多くの優れた大学院生やポスドク研究員を指導し、次世代の研究者の育成にも貢献しました。彼のキャリアは順調に進展し、1965年にはジュネーブ大学の分子遺伝学員外教授に任命されました。その後、1年間はカリフォルニア大学バークレー校の分子生物学科で客員教授を務めるなど、国際的な活動も行いました。

1971年、アーバー氏はバーゼル大学に移籍し、新設されたばかりのバイオセンターに所属しました。バーゼル大学バイオセンターは、生物物理学、生物化学、微生物学、構造生物学、細胞生物学、薬学といった多様な分野の研究室が集結しており、その設立目的は分野横断的な学際的研究を促進することにありました。このような環境で、アーバー氏はその研究をさらに発展させました。

私生活では、アーバー氏は結婚しており、二人の娘がいます。彼の研究、特に制限酵素の発見は、今日の遺伝子工学の礎となり、生命科学の発展に計り知れない影響を与えています。

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