一橋桐子 (76) の犯罪日記

一橋桐子の犯罪日記

本書『一橋桐子 (76) の犯罪日記』は、日本の作家原田ひ香による長編小説で、76歳の女性主人公が直面する孤独と生の意味を描いています。桐子は、長年の親友である宮崎知子（通称トモ）を病気で失った後、突然の孤独に苛まれ、自らの存在を問い直すことになります。彼女は中古の一軒家に独りで住んでいるものの、その広さは桐子一人には負担であり、高齢者向けのアパートに引っ越すことを決意します。

清掃のパートで生計を立てている桐子は、定職を失う不安を抱きつつも日々を過ごしていますが、社会からの孤立感に悩まされ、心の中で「孤独のまま死ぬのではないか」との不安が募ります。そんな折、テレビで高齢者の再犯率が高いという報道を見た桐子は、刑務所の生活がいかに「至れり尽くせり」かを知り、ふとした出来心から万引きを犯してしまいます。

彼女が捕まった際、万引きGメンの海野律子がその背景を聞き、同情の目を向けつつも桐子を励まします。桐子は徐々に「刑務所に入るための犯罪」を真剣に考え始め、自らを追い込む道を探すことになります。清掃のパート先で出会った若い男性・久遠との会話をきっかけに、桐子は偽札作りの方法を学ぼうとしますが、コンビニでアルバイトをしている高校生・榎本雪菜に止められ、その雪菜が桐子の生活に入り込むようになります。

桐子は「長く刑務所に入っていられる犯罪」を求めて、様々な危険な行動に足を踏み入れるようになります。闇金の手伝いや結婚詐欺セミナーに参加するなど、行動はますますエスカレートし、彼女自身の人生の選択を根底から揺るがすことになります。しかし、雪菜や不動産屋の相田、アパートの大家・門野、久遠など、周囲の人々の助けにより、自身が独りぼっちだと思い込んでいたことは実は間違いだったことに気づきます。

物語を通じて、桐子はさまざまな人々との出会いを通じて、人とのつながりの重要性や人生の意義を再発見していく姿が印象的です。桐子の「ムショ活」は単なる犯罪の模索ではなく、孤独からの脱却を目指す彼女の奮闘と成長の物語として展開されます。また、本作品は、同名のミニシリーズとしてテレビドラマ化もされ、さらに多くの視聴者に感動を与えました。

この小説は孤独というテーマを抱えつつも、桐子が新たに見つける仲間との絆や、彼女の心の変化を通じて、人生の豊かさや人とのつながりの大切さを描いています。桐子の人生の変化は、読者に多くの共感を呼び起こし、年齢に関わらず、誰しもが経験する孤独や人生の選択について深く考えさせられることでしょう。

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