一橋桐子 (76) の犯罪日記

一橋桐子（76）の犯罪日記

原田ひ香による長編小説『一橋桐子(76)の犯罪日記』は、2020年に雑誌『読楽』に連載され、同年末に単行本として刊行されました。2022年には文庫本も登場し、多くの読者に親しまれています。

あらすじ

76歳の一橋桐子は、友人の宮崎知子（通称トモ）が病死したことで、再び一人ぼっちの生活に戻ります。トモと3年間の同居生活を経て、桐子は彼女と作り上げた思い出と、新たに独りで過ごす不安を抱えながら日々を送ることとなります。桐子が住む中古の一軒家は彼女一人には広すぎるため、不動産屋の相田に勧められ、高齢者アパートへの引っ越しを決意します。

職場では清掃のパートを続けている桐子ですが、気軽に働き続けることができるかどうか不安を抱いています。彼女は、このまま孤独に死んでいくのだろうかという考えに沈む日々を送っていました。そんな中、テレビで高齢者の再犯率が高いことや、刑務所での快適な生活について耳にし、桐子の心には新しい考えが芽生え始めます。

ある日、パート帰りに寄ったスーパーで、衝動的に万引きをしてしまい、万引きGメンの海野律子に捕まります。律子は彼女の境遇を理解し、優しく諭しますが、桐子は本格的な犯罪行為に憧れを抱くようになります。

ビルの清掃作業中に出会った若い男性・久遠との会話を通じて、桐子は重罪の偽札作りに挑むことを決意します。しかし、コンビニでカラーコピーしようとしたところを、アルバイトの高校生・榎本雪菜に阻まれます。雪菜は家に帰りたくない理由から、桐子のアパートにしばしば現れるようになります。

桐子は「長く刑務所に入っていられる犯罪」を模索し、闇金の手伝いや結婚詐欺のセミナーに参加し、次第にそのアイデアに没頭します。やがて、雪菜の提案で狂言誘拐を計画しますが、これは失敗に終わります。更に桐子は清掃のパートも失い追いつめられ、刑務所行きの真の方法を求め始めます。しかし彼女は、周囲にいる人々が心配して助けてくれることを知り、孤独とは真逆の状況にいることに気づくのです。

登場人物

• - 一橋桐子: 料理が得意な76歳女性で、友人の死後、孤独な生活を余儀なくされます。
• - 宮崎知子: 桐子の友人で、独居生活を送っていた彼女を支える存在でしたが、病死してしまいます。
• - 榎本雪菜: コンビニでアルバイトをする高校生で、桐子との意外な友情が描かれます。
• - 海野律子: 万引きGメンとして桐子を捕まえ、彼女の心情に寄り添う人物です。
• - 久遠: 清掃のパート先で桐子と出会い、彼女に影響を与える若者です。

まとめ

この作品は、人間関係や老年期における孤独感、そして法の外での生き方を真剣に考える桐子の姿を通じ、多くの示唆を与えます。桐子が新たな生き方を模索する中で、周囲とのつながりや助け合いが大切であることに気づく過程は、多くの読者に感動を与えることでしょう。

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