一瀬桑

一瀬桑について

一瀬桑（いちのせくわ）は、山梨県西八代郡市川三郷町に位置する養蚕用のクワ苗木であり、その原木は特に貴重な存在です。農林水産省によって品種名一ノ瀬として知られ、日本全国にその名が広まったのは、大正から昭和初期にかけてのことです。この一瀬桑は、日本の養蚕業の発展に大きな役割を果たし、現在では山梨県の天然記念物として指定されています。

歴史

一瀬桑の起源を遡ると、1898年（明治31年）にさかのぼります。当時、西八代郡の上野村川浦に住んでいた一瀬益吉が、中巨摩郡忍村から購入した「鼠返し」という品種の桑苗から、特に優れた3株を発見しました。これらは、樹木の色合いからシロキ（2株）とアカギ（1株）と名付けられました。益吉はこの3株を親として、桑園で育てて近隣の村に配布しました。

この苗木は、通常の鼠返しとは異なり、光沢のある大きな葉と高い病害虫抵抗力を持ち、その優れた品質は出品された品評会でも高く評価されました。特に1916年の西八代郡農会主催の桑園品評会および大日本蚕糸会山梨支会主催の第三回蚕糸品評会においては、優等賞を受賞し、一瀬桑は全国的に知名度を上げていきました。その後、この桑は農林水産省により、一ノ瀬という正式な栽培品種名が与えられ、瞬く間に日本各地に普及していきました。

品種登録後には、シロキが一瀬の青木、アカギが一瀬の赤木と名付けられ、益吉は自らの桑園の改良と製糸工場の設立に邁進しました。彼は生涯を養蚕業の振興に捧げ、1921年に55歳で亡くなります。その後、彼の功績を称えて1941年に甲府の舞鶴城公園に『一瀬桑由来碑』が建立され、1948年には貞明皇后による記念植樹が行われました。1976年には一瀬桑が山梨県の天然記念物に指定されることとなります。

概要

一瀬桑は、甲府盆地の南西部、JR身延線の芦川駅から約1キロの場所にあります。川浦地区にはかつて益吉が所有していた桑園の一部が存在し、現在でもこの一瀬桑は竹柵で囲まれ、大切に保護されています。

青木の特徴

• - 南側の株：根回り約66センチ、樹高約3.5メートル
• - 北側の株：幹囲約88センチ、樹高約4メートル

赤木の特徴

• - 根回り約98センチ、樹高約4メートル

所在地

山梨県西八代郡市川三郷町上野33番地に位置します。

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このように、一瀬桑はただの植物ではなく、日本の養蚕業において重要な役割を果たした歴史を持つ特別な存在です。地域に根付いたこの桑が、今後も大切に守られ続けることを願っています。

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