一絃の琴

一絃の琴

『一絃の琴』は、宮尾登美子による長編の時代小説で、1978年10月20日に講談社から発表されました。この作品は、南国土佐を舞台に、幕末から明治にかけての大きな時代の変化の中で、一絃琴の魅力に引き込まれた二人の女性の人生を描いています。この小説は、第80回直木賞を受賞し、後にテレビドラマ化もされました。

ストーリーの概要

物語は、幕末の時代から始まります。主人公の澤村苗は、土佐藩士の娘であり、一絃琴を学ぶために努力を重ねています。彼女は厳格な師匠、大友流月に師事し、その一絃琴の演奏技術を磨いていく中で、徐々に流月に惹かれていく。しかし、流月の突然の死により、苗は悲しみに暮れ、そしてその後は縁談が持ち込まれることもありませんでした。

そんな時、苗は望月健直から愛の告白を受け、彼は流月の経緯を理解した上で「必ず幸せにする」と断言します。これを受けて苗は望月家に嫁ぎますが、そこでの生活は厳しいものでした。姑の清からは一絃琴を禁じられ、代わりに薙刀の稽古を強いられます。妹の愛子が望月家に訪れた時、彼女はただただ様子を見守るしかありませんでした。

その後、戊辰戦争が始まり、健直は戦に出ますが、彼は戦死してしまいます。苗は健直の葬儀を終えた後、実家に帰る許可が出ず、しばらくの間望月家に留まることとなりました。1年後、ようやく実家へ帰ることが許される中、苗は姑に一絃琴の音色を奏でることで彼女の想いを伝えます。

テレビドラマ化

原作小説は、その後2000年にNHKで「時代劇ロマン」としてドラマ化されました。ドラマ版では、物語は原作と同様に苗に焦点を当てていますが、原作の後半では弟子の蘭子が主体となる部分がドラマでは一貫して苗が中心となっています。実際、全18回にわたって描かれたこのドラマは、視聴者からも高く評価されています。

登場人物

物語の核心にいる澤村苗を始めとし、彼女を取り巻く登場人物たちは、実際の歴史背景の中でそれぞれの人生を歩んでいます。苗の父母や妹、夫、師匠など多彩なキャラクターが物語の展開と深みを与え、時代の移り変わりを感じさせます。

書誌情報

この作品は、1978年に初版が発行されて以来、何度か再版されています。特に1982年に刊行された講談社文庫版や2000年の新装版、2008年の新装版文庫は、多くの読者に親しまれています。

『一絃の琴』は単なる恋愛小説ではなく、時代背景や音楽文化、女性の生き様を豊かに描いた作品であり、現代においてもその価値は色あせることがありません。

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