一鍬田徹

一鍬田徹氏は、1964年に千葉県千葉市に生まれ、日本の現代彫刻界に活動の場を置く彫刻家であると同時に、美術教育の分野で後進の指導にあたる教育者です。専門は美術教育、特に造形芸術教育学や彫刻研究に深く関わっています。

略歴

氏のキャリアは、美術教育の研究と実践を基盤としています。1990年に千葉大学大学院教育学研究科美術教育専攻を修了した後、同年より千葉市内の公立小学校で教諭として教育現場での経験を積みました。その後、活動の場を広島へ移し、1994年には広島大学学校教育学部講師に就任します。大学での教職を続け、2003年には同大学教育学研究科の助教授となり、さらに研究と教育における責任ある立場を担うことになります。

彫刻活動と個展

教育者としての顔を持つ一方、一鍬田氏は彫刻家としても精力的に制作活動を行っています。その作品は、東京や広島など、様々な場所で発表されてきました。

特に注目される個展としては、東京・銀座のギャラリーオカベ（2000年）、すどう美術館（2001年-2002年）、ガレリア・グラフィカbis（2003年・2004年）での「生と死のリアリティー」展が挙げられます。これは氏が一貫して探求してきたテーマの一つを示唆しています。

また、広島という土地に根差した活動として、2007年には広島市の広島市立本川小学校・被爆建物という歴史的な場所で「ヒロシマのピエタ」展を開催しています。この展覧会は、平和や生命といった重層的なテーマに彫刻を通して向き合う氏の姿勢を示すものでしょう。

さらに、2012年には、はつかいち美術ギャラリー（廿日市市）で「魂の歩み いのちの造形」展を開催するなど、広島県内でも継続的に作品を発表し続けています。

受賞

彫刻家としての功績は、複数の賞によって認められています。

2009年には、公益財団法人エネルギア文化・スポーツ財団から第15回エネルギア美術賞を受賞しました。これは中国地方の文化・芸術振興に貢献する活動が評価されたものです。

翌2010年には、財団法人けんしん育英文化振興財団より第26回県民文化奨励賞を受賞しています。これらの受賞は、彫刻家としての氏の芸術的功績と、地域文化への貢献が広く認められていることを示しています。

著作

美術教育者としての研究成果は、多くの著作にも結実しています。単著・共著を含め、美術教育や彫刻に関する専門書を執筆しています。

主な共著には、『ロダンのかげの彫刻家たち －もう一つの近代具象彫刻論－』（あい書林、1995年）があり、近代彫刻史における新たな視点を提供するものです。

また、美術教育の実践に資する書籍として、『図画工作・美術科重要用語300の基礎知識』（明治図書、2000年）や、『図画工作科教育学』（協同出版、2002年）があります。これらは、美術教育の基礎理論や実践的な知識を体系的にまとめたものであり、教員を目指す学生や現職の教員にとって重要な文献となっています。

一鍬田徹氏は、このように彫刻家として普遍的なテーマを追求する表現活動を行いながら、教育者として美術教育の発展に貢献し、その研究成果を書籍として発表するなど、多岐にわたる活動を展開しています。

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