七夕豪雨

七夕豪雨

概要

七夕豪雨（たなばたごうう）は、1974年（昭和49年）7月7日（日曜日）に、日本列島に接近した台風8号の影響を受けて静岡県で発生した集中豪雨です。この豪雨により、県内の広範囲で洪水や浸水、土砂災害が相次ぎ、大きな被害が生じました。

特に激しい雨が観測されたのは静岡市で、7月7日午前9時から翌8日午前9時までの24時間雨量は508ミリメートルに達し、これは静岡地方気象台が観測を開始して以来の最高記録となりました。この記録的な降雨は、短時間で河川の急激な増水や氾濫を引き起こしました。

県内でも特に被害が集中したのは、静岡市内を流れる安倍川の下流域と、当時の清水市（現在の静岡市清水区）を流れる巴川の流域です。これらの地域では、河川の堤防が決壊したり、氾濫したりする事態が発生したほか、周辺の山地や丘陵地では崖崩れや土砂崩れが頻発しました。これらの複合的な要因により、多くの家屋が浸水、あるいは全壊・流出するという被害が発生しました。県全体では、合計で43名の方が犠牲となり、家屋の全壊・流出は32戸、床上浸水は11,981戸、床下浸水は14,143戸に及ぶ甚大な被害となりました。静岡市以外でも、浜松市で8名、沼津市で5名、森町、富士市、三島市でそれぞれ1名の方が亡くなっています。

特に巴川流域で被害が拡大した要因の一つとして、河川の流路勾配が非常に緩やか（1/750から1/50,000）であったことが挙げられます。水が流れにくく滞留しやすいため、短時間の集中豪雨に対して非常に脆弱だったのです。この七夕豪雨を契機として、巴川流域の浸水対策として大谷川放水路の建設が計画され、1999年（平成11年）5月に完成しました。

社会的・経済的影響

この豪雨は、地域社会にも大きな影響を与えました。静岡鉄道は、被害を受けた清水市内線と浅間山リフトの復旧を断念し、廃止する決定を下しました。

静岡県には多くの模型メーカーが本社や工場を構えていますが、特に巴川流域に近接していた今井科学や青島文化教材社、また焼津市に位置する長谷川製作所（現在のハセガワ）など、各社は社屋や工場が浸水する被害を受けました。これにより、大切な商品在庫や貴重な資料が水濡れや破損の損害を被ったと伝えられています。

また、豪雨が発生した7月7日は、第10回参議院議員通常選挙と静岡県知事選挙の投開票日でもありました。このため、報道機関は選挙の開票状況と災害の状況という、二つの大きなニュースへの対応に追われました。静岡市内の主要道路は冠水や土砂崩れにより寸断され、交通網は麻痺状態に陥りました。テレビ局などは、選挙報道の準備をしていた候補者事務所から、開票の大勢が判明次第、速やかに中継機材を撤収し、巴川流域をはじめとする被害の大きかった地域への移動を試みましたが、道路の寸断や大渋滞により、旧静岡市内・旧清水市内を問わず、取材活動は非常に困難を極めたと伝えられています。

関連作品

この七夕豪雨は、静岡県清水市（現：静岡市清水区）出身の漫画家であるさくらももこ氏の自らの体験を基にした作品でも触れられています。代表作『ちびまる子ちゃん』の「まるちゃんの町は大洪水」というエピソード（『りぼん』1987年6月号掲載）で、当時の町の状況や人々の様子が描かれています。

関連項目

塩水くさび
昭和49年台風第8号
* 平成30年7月豪雨

もう一度検索