万徳院

万徳院の歴史と背景

万徳院（まんとくいん）は、真言宗に属する寺院で、正式名称は福光寺万徳院です。この寺の歴史は古く、安芸国大朝舞綱に由来し、長い間地域に根付いた文化遺産です。万徳院の前身である大朝万徳院は、吉川元長によって1575年頃に安芸国大朝に設立されました。その後、この寺は様々な変遷を経て岩国に移転しました。以下に万徳院の詳細な歴史を掘り下げていきます。

岩国万徳院の成立

万徳院の歴史的な転換点は、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いの後に起こりました。この戦いに敗れた毛利家は周防・長門国に減封され、吉川家の当主である吉川広家も転封を余儀なくされました。吉川氏の本拠地である安芸国大朝荘にあった万徳院も、岩国に移転し真言宗の寺院として再編成されました。これにより、宗教的な拠点としての役割を果たすことになりました。

吉川元春の正室である新庄局も、万徳院に埋葬されており、寺院としての上昇化を象徴しています。岩国万徳院は、吉川家の庇護を受けながら現在まで歴史を重ねてきました。

大朝万徳院の詳細

先代の大朝万徳院は、当初本堂と庫裏のみ存在していましたが、吉川元長の別邸としても機能しました。元長の死後、弟の吉川広家が寺院の改修を行い、庭や石垣の増築を行いました。広家の正室であった宇喜多直家の娘である容光院も、後にこの寺に埋葬されています。

しかし、慶長5年の転封以降、元の万徳院は放置され、次第に廃墟と化してしまいました。それでも、1986年には「吉川氏城館跡」の一部として国の史跡に指定され、さらに1991年からは広島県教育委員会による発掘調査が始まりました。整備を経て、現在では地域の歴史公園となっています。

整備と現代の万徳院

現在の万徳院では、本堂や庫裏、風呂屋、庭園が復元されており、石垣や参道なども残っています。歴史的な価値を持つこれらの遺構は、吉川氏の興隆を物語っています。また、本堂の規模を元のサイズで再現したガイダンスホールも設けられており、訪問者が歴史を学び感じ取ることができる環境が整っています。

さらに、毎月第3日曜には蒸し風呂体験が行われるなど、観光客や地域住民にとって貴重な体験の場ともなっています。

旧万徳院庭園について

庭園は本堂の北側に位置し、霊屋や坪庭風の小庭、そして西側には池庭が配置されています。これにより、鑑賞が楽しめる2つの主軸を持つ庭園であったと考えられています。旧万徳院庭園は2004年に国の名勝として指定され、その美しさと歴史的な重要性が評価されています。

結論

万徳院は、歴史的な背景と地域の文化を振り返る上で重要な役割を果たしてきました。岩国に移転した後もその精神は生き続け、今では地域社会にとっても大切な場所となっています。訪れる人々は、美しい庭園や復元された寺院を通じて、かつての繁栄を感じることができるでしょう。

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