三俣の大雪崩

三俣の大雪崩

「三俣の大雪崩」、または「三俣雪崩」として記憶されるこの災害は、1918年（大正7年）1月9日の深夜に、新潟県南魚沼郡三俣村（現在の湯沢町字三俣）で発生した極めて大規模な雪崩です。

この雪崩により、当時の三俣村は甚大な被害を受けました。合計180名もの人々が雪に飲み込まれ、そのうち158名が命を落としました。犠牲者の内訳は、雪の重みによる圧死が155名、救出後に容体が悪化して亡くなった方が3名です。この死者数は、文献記録として残されている日本の雪崩災害の中で、史上最悪の規模とされています。

災害発生の背景

雪崩が発生する直前の1918年1月2日から、新潟県内は猛烈な吹雪に見舞われ、記録的な大雪となっていました。これは「大正7年豪雪」として知られる厳しい気象状況の一部でした。このような大量の雪が積もる状況が、大規模な雪崩の発生を招く要因となったと考えられています。

雪崩の発生と規模

悲劇は1月9日の午後11時20分頃に起こりました。三俣村の東側に位置する「前の平」と呼ばれる丘陵の頂上付近で、積もった雪の表面が広範囲にわたって崩れ落ちる大規模な表層雪崩が発生したのです。提供された記録によると、雪崩の崩壊部分は高さがおよそ236メートル、幅が約546メートルに及び、雪崩の厚さは6メートルを超える場所もあったとされています。また、発生時の積雪深が3メートルを超えていたことから、「泡雪崩」と呼ばれる種類の雪崩であった可能性が高いと考えられています。

雪崩の襲来と被害

崩れ落ちた大量の雪は、山肌を猛スピードで流れ下りました。途中の尾根に生えていた杉林にぶつかり、雪崩は二つの流れに分かれました。一方の流れは、村の小学校を直撃し、校舎を跡形もなく倒壊させました。もう一方、そして本流となった雪崩は、三俣村の集落を文字通り飲み込みました。村にあった57戸の家屋のうち、28戸が雪崩の直撃を受けて倒壊し、その多くが分厚い雪の下に埋没しました。発生時間が深夜であったため、多くの住民が就寝中に被災し、逃れる間もなく雪に閉じ込められてしまったことが、犠牲者が多数に上った主な要因です。

村の状況と第一報

当時、三俣村には水力発電所の建設に伴う工事関係者が多数滞在していました。村の人口が増えていたことも、巻き込まれた人数が多い一因かもしれません。この未曽有の災害の第一報を外部に伝えたのは、付近で発電所工事に従事していた一人の作業員でした。彼は危険を顧みず、深夜の猛吹雪の中、隣接する湯沢町へと芝原峠を越え、九死に一生を得てこの惨事を知らせたのです。

救助活動と犠牲者の背景

報せを受けた湯沢町では、直ちに大規模な救助隊が編成され、被災地へと向かいました。しかし、夜間に発生した災害であり、また多くの被災者が家の中で就寝中に雪に埋もれてしまったため、救助活動は極めて困難を極めました。雪に埋まった家屋から生存者や犠牲者を捜索する作業は難航し、結果として圧死者155名という悲惨な結果を招きました。

雪崩発生の原因に関する考察

この大規模雪崩の原因については、いくつかの説が議論されました。当時、三俣村では日本水力発電による湯沢発電所へ送水するためのトンネル工事が進行しており、雪崩発生と同じ深夜の時間帯には、作業員の交代を知らせる合図として発破が行われていました。この発破が雪崩の引き金になったのではないかという説が有力視されました。しかし、同じ大正7年豪雪の影響を受けて、当日には神立村や上田村など、近隣の他の地域でも雪崩災害が発生していたことも事実です。そのため、三俣の大雪崩の原因が特定の発破行為のみによるものなのか、あるいは広範な気象条件や地形的な要因など複合的なものだったのかについては、確定的な結論には至っていません。

三俣の大雪崩は、その甚大な被害規模から、日本の雪崩災害史において最も悲惨な出来事の一つとして記録されています。

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