三屯牽引車

三屯牽引車の概要

三屯牽引車（さんとんけんいんしゃ）は、大日本帝国陸軍が初めて自国で生産し、配備した砲兵用トラクターです。この車両は、五〇馬力牽引自動車とも称され、加農砲の効率的な牽引を目的として開発されました。1926年から1931年までの期間に、大阪工廠によって合計35輌が製造されました。これは日本の重車両自国生産の出発点ともなり、国産戦車の開発にも寄与しました。

開発の経緯

開発は大正9年（1920年）の4月に始まり、陸軍技術本部が担当しました。初期のエンジン設計が大正10年（1921年）11月に完成し、全体の設計図が翌年の1月に完成しました。この時、大阪工廠で2輌の試作に着手しました。試作車は1923年10月に完成し、試験結果は設計通りの性能を示しましたが、いくつかの欠点も明らかになりました。

特に、履帯の耐久性が不足していたこと、装置に改良が必要であったことが問題視されました。1924年3月には、エンジンや冷却装置の改修が行われ、その後も実用試験が続きました。特に1925年の試験には関東各地での1週間にわたる実地試験が含まれ、最終的には実用化されることが認められました。

特徴と性能

三屯牽引車は、ホルト・トラクターを上回る性能を持ちながらも、故障が頻発する問題を抱えていました。走行中の故障率が高く、部隊からは信頼性に欠けるとの声が上がることもありました。特に昭和6年（1931年）に行われた行軍の際には、中隊のうち2輌から3輌が故障し、全車輌が無事に到達できたのは1個中隊のみでした。このため、馬による牽引と機械化のどちらが優れているかの議論を引き起こしました。

構造と仕様

この牽引車は全装軌式で、前方に機関室、後方に運転席を配していました。エンジンは四屯自動貨車と共通の直列4気筒水冷ガソリンエンジンを使用し、50馬力を出力する設計となっています。最高速度は17km/hであり、4段階の前進ギアと1段階の後進ギアを備えています。燃料はメインタンクと予備タンクを合わせて最大180リットルを持ち運び、消費量はおおよそ毎時10から12リットルでした。

諸元と評価

三屯牽引車の自重は4.27トン、全長は3.645メートルに及び、搭乗定員は8名でした。この車両の登坂能力は30%であり、回転半径は単独では小回りが利き、牽引時には4メートルでの旋回が可能です。日本が独自に製造した砲兵トラクターとしての歴史的意義は非常に大きく、こうした技術的な挑戦の成果として評価されています。

三屯牽引車は自国生産の重車両の基地を築き、以後の戦闘車両開発に多大な影響を与えました。この車両の開発と実用試験を通じて、日本陸軍の兵器技術が一歩進んだことは、第二次世界大戦に向けた機動力強化の一環としても重要な位置を占めていました。

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