三度栗

三度栗伝説：年に三度実をつける不思議な栗を巡る物語

三度栗（さんどぐり）は、シナグリ（Castanea mollissima cv.）の一品種であり、その名の通り年に3度実をつけるという伝承を持つ栗です。この珍しい栗を巡る伝説は、日本各地に残されており、地域ごとの独自の物語が語り継がれています。

各地の三度栗伝説

静岡県菊川市三沢の三度栗伝説

遠州七不思議の一つとして知られる三沢の三度栗伝説は、弘法大師空海が村を訪れた際に始まります。子供たちが美味しそうに栗を食べているのを見た空海が、分けて欲しいと頼んだところ、子供たちは快く栗を差し出しました。これに喜んだ空海は、「これからは、この村に年に三度栗を成らすことにしよう」と告げ、その言葉通り、三沢の栗は年に3度実をつけるようになったと言われています。

静岡県周智郡森町園田の三度栗伝説

園田の三度栗伝説は、徳川家康にまつわる物語です。武田軍との戦いに敗れた家康が、園田の地で一軒の農家に助けを求めました。老婆は拾ってきたばかりの生栗を家康に差し出し、家康はそれを食べ、残った一つを庭先の畑に埋めて、自分が食べた分だけ実るように祈りました。すると、その栗の木は年に3度実をつけるようになったと伝えられています。

静岡県袋井市三川の三度栗伝説

三川にも徳川家康にまつわる三度栗伝説が残っています。武田軍に敗れ逃げ込んだ家康が食事をする際、箸がなかったため、家来が近くの栗の小枝を折って箸として差し出しました。食後、家康はその小枝を地面に突き刺し、「もし天下を取ったら1年に3度実を結ぶように」と願ったところ、その栗の木は本当に年に3度実を結ぶようになったと言われています。

高知県高岡郡四万十町岩本寺の三度栗伝説

岩本寺七不思議の一つである岩本寺の三度栗伝説も、弘法大師空海が関わっています。高い木に実る栗を取れずに泣いている子を見た空海は、「うない児の とる栗三度実れかし 木も小さく いがもささずに」と歌を詠みました。それ以来、岩本寺の栗は年に3度実をつけるようになったと伝えられています。

新潟県阿賀野市保田焼栗山孝順寺の三度栗伝説

越後七不思議の一つ、焼栗山孝順寺の三度栗伝説は、親鸞にまつわる珍しい物語です。老女が親鸞に焼き栗を差し出したことに対する感謝として、親鸞は「我が勧むる弥陀の本願、末世に繁昌いたさば、この栗、根芽を生じて一年に三度咲き実るべし。葉は一葉にして二葉に分かれて繁茂せよ」と唱え、栗を蒔きました。すると、焼き栗から芽が出て、年に3度実をつけ、葉の先は二つに分かれて茂るようになったと言われています。同様の伝説が福井県鯖江市にも存在します。

岡山県真庭市の三度栗伝説

真庭市の三度栗伝説では、弘法大師空海が空腹で泣く子供のために湧き水を作りました。子供が元気に走り回るのを不思議に思った親がその水を飲むと、それは酒でした。しかし、親がその泉で足を洗ってしまったために泉は枯れてしまいます。数年後、再びこの地を訪れた空海は、泉が枯れたことを知り、代わりに年に3度実をつける栗をこの地に残して去っていったと伝えられています。


これらの伝説は、三度栗が単なる珍しい栗ではなく、人々の願いや信仰、歴史と深く結びついていることを物語っています。各地の三度栗伝説を訪ねてみるのも、日本の文化や歴史に触れる良い機会となるでしょう。

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