三振法

三振法：アメリカにおける厳格な犯罪対策と社会への影響

1990年代、アメリカ合衆国で州法として制定された三振法（Three-strikes law）は、その厳格さから社会に大きな影響を与えました。日本語では「スリーストライクス・アンド・ユー・アー・アウト法」とも呼ばれ、野球の三振になぞらえた名称がつけられています。1994年に制定された連邦三振法が最も有名です。

三振法の成立背景

三振法成立の背景には、アメリカの刑務所における定員超過と、凶悪犯罪者の再犯増加という深刻な問題がありました。短い刑期で仮出獄した犯罪者が再び犯罪を犯すケースが多く、社会不安を高めていたのです。

また、アメリカでは犯罪解決率が低いという現状も、三振法制定の要因となりました。多くの凶悪犯罪者が常習犯であり、表面化していない多くの重罪を犯している可能性が高いと懸念されたからです。

三振法は、これらの問題に対処するため、重罪の前科が2回以上ある者が3度目の有罪判決を受けた場合、罪状に関わらず終身刑とすることを規定しました。これにより、再犯の可能性を排除し、重罪の未然防止を目指す狙いがありました。ワシントン州を皮切りに、多くの州で制定され、2004年には26の州と連邦政府で施行されるまでに至りました。

賛否両論

三振法の賛否は大きく分かれています。

支持者たちは、三振法によって犯罪率が低下すると主張します。厳罰によって犯罪抑止効果が期待できるという考えです。

しかし、批判的な意見も多く存在します。軽微な犯罪でも、過去に重罪の前科がある場合、終身刑が科されるケースが問題視されています。例えば、靴下の万引きで終身刑、ピザ一切れを奪っただけで懲役25年といった判例は、刑事罰と犯罪事実のバランスを欠くと批判されています。司法機関からも、三振法の厳格さに対する懸念の声が上がっています。

改正と課題

三振法は「杓子定規的に厳格すぎる」との批判を受け、いくつかの州で改正が進められました。「三振」の条件を緩和したり、科される刑を軽減したりする動きが見られます。

三振法自体の定義も変更され、「重罪の前科が2回以上ある者が3度目の重罪で有罪判決を受けた場合、通常より重い刑を科す」というより柔軟な解釈が用いられるようになりました。

しかし、依然として課題は残ります。マイケル・パルデュー事件はその象徴的な例です。殺人罪で終身刑を宣告されたパルデューは、その後無罪が証明されましたが、脱獄を3回繰り返したことで、再び三振法が適用され終身刑を言い渡されたのです。後に仮釈放が認められましたが、それは脱獄罪が無効になったためではありませんでした。この事件は、三振法の運用における問題点を浮き彫りにしました。

まとめ

三振法は、アメリカにおける犯罪対策の歴史において重要な位置を占める法律です。犯罪抑止効果を期待する声がある一方で、その厳格さから人権侵害や司法の不均衡を招くとの批判もあります。改正が繰り返されているものの、三振法の是非をめぐる議論は、現在もなお続いています。今後の法改正の方向性や、社会全体の犯罪対策における三振法の位置づけは、引き続き注視していく必要があります。

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