三星宗雄

三星 宗雄

三星宗雄（みつぼし むねお）氏は、1950年に福島県会津若松市に生まれた日本の著名な心理学者です。特に、色彩心理学、環境色彩学、そして実験心理学といった分野を専門としており、色と人間行動、色彩環境との相互作用に関する研究を長年にわたり深化させてきました。

氏の研究は多岐にわたりますが、中心となるのは色彩が人間の心理や環境に与える影響を科学的に分析することです。例えば、自然界における色の分布パターンを探求し、それが生物の行動や生態系にどのような意味を持つのかを考察しています。また、熱帯アマゾンという豊かな色彩を持つ環境における色の諸相に関する研究も手掛けており、多様な自然環境における色の役割を理解しようとしています。さらに、私たちの日常生活に密接に関わる分野として、スポーツにおける色の機能にも注目しています。ユニフォームの色が選手のパフォーマンスや心理状態、あるいは観客の心理に与える影響などを実験心理学の手法を用いて分析しています。快適で調和のとれた色彩環境を実現するためのカラーコーディネーションの研究も重要なテーマの一つであり、建築空間や都市環境における色彩計画への応用を目指しています。

三星氏は、これらの研究を通じて、色彩研究に新たな視点をもたらしました。特に注目されるのは、色彩の利用に伴う倫理的な問題に焦点を当てた色彩倫理学の提唱者である点です。色が無意識のうちに人間の行動や判断に影響を与える力を考慮し、その利用における責任や規範について学術的に考察する必要性を訴えています。これは、色彩が単なる感覚的な要素にとどまらず、社会的な影響力を持つ存在であることを明確に意識させる重要な提案です。

氏の学術的なキャリアは、1974年に千葉大学人文学部人文学科の心理学専攻を卒業することから始まりました。その後、東京大学大学院人文科学研究科の心理学専攻に進学し、1977年に修士課程を、1981年には博士課程を修了しました。大学院での学びを通じて、心理学、特に実験心理学の手法を深く習得し、その後の研究活動の基盤を築きました。博士課程修了後も研究への意欲は衰えず、1986年にはアメリカ合衆国のミシガン大学Department of Ophthalmologyにおいて研究助手として活動しました。この海外での経験は、氏の研究視野をさらに広げる貴重な機会となりました。

日本に帰国後、1987年に神奈川大学に籍を移し、外国語学部の専任講師に着任しました。教育と研究の両面で実績を積み重ね、1989年には同外国語学部の助教授に昇任します。さらに、1995年には教授となり、長年にわたり外国語学部において教鞭を執りました。その後、2007年には人間科学部が新設され、同人間科学部の教授として異動しました。人間科学部では、氏の専門である色彩心理学や環境色彩学がより直接的に教育・研究の中心となり、新たな環境で後進の育成と研究の推進に力を注いでいます。

三星宗雄氏の主要な研究成果は、数多くの論文として発表されているほか、専門書として刊行されています。代表的な著書としては、環境色彩学の基礎を体系的に解説した『環境色彩学の基礎』（2006年）、色彩が人間の心理に与える影響を分かりやすく解説した『色の心理学』（2008年）があります。また、文化や自然における色の象徴的な意味を探求した『世界の色の記号:自然・言語・文化の諸相』（2011年）や、色彩の快感やその倫理的側面を深く掘り下げた『色彩の快:その心理と倫理』（2014年）などがあり、いずれも色彩研究分野における重要な文献として広く参照されています。

三星氏は、色彩という身近でありながら奥深い現象を、心理学的な視点から科学的に解明し、その知見を人間や環境の bienestar（幸福・健全性）の向上に役立てることを目指しており、日本の色彩研究を牽引する研究者の一人としてその活動を続けています。

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