三木浩一

三木 浩一氏は、1958年に香川県で生まれ、日本の法学界において、特に民事訴訟法、倒産法、そして裁判外紛争解決（ADR）を主要な研究対象として精力的な活動を展開してきた第一人者です。

慶應義塾大学法学部を卒業後、同大学大学院法学研究科修士課程を修了し、法学研究者としての道を歩み始めました。1986年には司法修習を終え、弁護士登録も行っています。大学でのキャリアは、法学部助手から始まり、専任講師、助教授を経て、1997年には教授に就任しました。2004年からは大学院法学研究科教授も兼任しています。教育・研究活動の一環として、メルボルン大学、イェール大学、カリフォルニア大学ヘイスティングス校といった海外の著名な教育機関でも客員研究員として招聘され、国際的な視点からの研究交流を深めました。

その研究成果は多数の著作や論文として発表されており、民事訴訟手続、倒産処理法制、ADR、集合訴訟制度、民事執行法制など、幅広い分野にわたります。共著、編著を含め、『はじめて学ぶ民事訴訟法』、『民事訴訟法』、『民事再生法を活かす鍵』、『新仲裁法の理論と実務』、『民事訴訟における手続運営の理論』（単著）、『民事訴訟による集合的権利保護の立法と理論』（単著）など、実務家や研究者はもちろん、学生向けの基本書から専門書まで多岐にわたります。論説においても、「重複訴訟論の再構築」、「アメリカ合衆国連邦地裁における訴訟付属型ＡＤＲ」、「消費者団体訴訟の立法的課題」、「集団的消費者被害救済制度の展望と課題」、「民事執行制度の機能強化に向けた立法提案」、「早期開示命令制度」など、常に時代の要請に応じたテーマに取り組み、活発な議論を提起してきました。

学会活動では、日本民事訴訟法学会、仲裁ADR法学会で理事長を務めたほか、国際訴訟法学会（International Association of Procedural Law）の副会長に就任するなど、国内外の主要な学会においてリーダーシップを発揮しています。

また、その専門知識と経験を活かし、幅広い社会貢献活動にも従事しています。日本学術会議会員、国際連合国際商取引法委員会（UNCITRAL）日本政府代表として国際的な法制の議論に携わったほか、旧・新司法試験考査委員として法曹養成にも貢献しました。法制審議会においては、担保執行法制、民事訴訟、人事訴訟、民事執行法、主権免除法制、非訟事件手続法・家事審判法など、多岐にわたる部会で幹事や委員を務め、重要な法改正や新たな制度設計に中心的な役割を果たしました。特に、消費者保護の分野では、内閣府や消費者庁、消費者委員会の研究会・専門調査会において座長や座長代理として、集団的消費者被害回復制度の設計に深く関与しました。カンボジアや中華人民共和国の民事訴訟法整備プロジェクトにも委員として協力し、開発途上国の法整備支援にも尽力しています。この功績により、2009年にはカンボジア友好勲章を受章しました。

長年の研究・教育への貢献が認められ、2014年には義塾賞、2021年には福沢賞を受賞しています。2023年には慶應義塾大学名誉教授の称号を授与されました。現在は名誉教授である傍ら、弁護士として阿部・井窪・片山法律事務所に所属し、オブカウンセル・顧問として実務の分野でも活動を続けています。

三木氏は、教育者、研究者、そして実務家、さらには法改正や制度設計に関わる要職を歴任するなど、多角的な視点から民事司法制度の発展に多大な貢献を果たしています。

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