三机村

三机村（みつくえむら）の概要

三机村は、1956年まで愛媛県西宇和郡に存在した村です。佐田岬半島のほぼ中央に位置し、北は伊予灘、南は宇和海に面した農漁村でした。1956年に四ツ浜村と合併して瀬戸町となり、その後、平成の合併で伊方町の一部となりました。しかし、「三机」という地名は、現在も三机小学校などにその名を残しています。

地理

三机村は、佐田岬半島のほぼ中央に位置し、北に伊予灘、南に宇和海を望む、細長い地形が特徴です。中央部には山地が東西に横たわり、東は伊方町、西は四ツ浜村と接していました。伊予灘側は険しい海岸線が続きますが、三机湾という大きな入り江があり、その入り江には砂嘴が形成されています。この砂嘴は「曲がり橋立」とも呼ばれ、景勝地として知られていました。三机湾は、藩政期には参勤交代の中継地として、宇和島藩だけでなく、薩摩藩や熊本藩の船も寄港していました。また、伊予灘側の小振と宇和海側の塩成の間は半島が最も狭く、約700メートルしかありません。かつては、この場所に堀切を造る計画もあったそうです。

地名の由来

三机という地名は、古くは「御着江」とも書かれていました。これは、宇佐八幡の分霊が漂着した地であることに由来するとされています。

社会

地域・集落

藩政期、三机一帯は「三机浦」と総称され、三机本浦の他に、足成、大江、志津、小島、神崎、釜木、塩成、川之浜の8つの枝浦に分かれていました。明治時代に入り、町村制が施行されると、足成、塩成、三机、大江、志津、小島の6つの村が合併し、三机村となりました。大字制は採用されず、合併前の6村がそれぞれ小字として残りました。この小字制度は、瀬戸町を経て、現在の伊方町になっても維持されています。

行政

村役場は、字三机に置かれていました。

人口・世帯数

三机村の人口と世帯数は、以下の通り変遷しました。

1904年（明治37年）：6103人、1006戸
1913年（大正2年）：6917人、1080戸
1921年（大正10年）：6619人、1039戸
1954年（昭和29年）：5622人、1243戸

教育

三机村には、以下の学校がありました。

三机小学校: 1873年に三机浦学校として開設。1882年に塩成、大江、足成に分校が発足。1947年に三机小学校となりました。現在は伊方町立の小学校として存続しています。
塩成小学校: 1882年に三机浦学校の第一分校として設置されましたが、2009年に三机小学校に統合されました。
三机第二小学校: 1977年に三机小学校に統合されました。
大江小学校: 1977年に三机小学校に統合されました。
三机中学校: 1947年に開校。1978年に三机第二中学校を統合。1994年に四ッ浜中学校と統合し、瀬戸中学校となりました。瀬戸中学校は現在も存続しています。

歴史

古代 - 中世

中世には、宇都宮房綱の所領の一部であったとされています。天正年間には、宇都宮氏の家臣である井上重房が砦を築き、海賊の横行を抑えたことで、地域住民から歓迎されました。この砦は、後に中尾城と呼ばれましたが、天正年間に長宗我部氏の侵攻により落城し、重房は亡くなりました。

藩政期

宇和島藩の領地となりました。庄屋は、三机兵助から井上家、兵頭家、菊池家へと引き継がれました。1610年には、宇和島藩主の富田信高が塩成堀切の掘削工事を開始しました。この堀切は、佐田岬半島を横断して、船の航路を短縮する目的で計画されましたが、1612年に中止されました。この工事には多くの人員が動員され、村人たちが困惑したため、三崎観音の祟りではないかという噂が立ったと伝えられています。その後、宇和島藩に入った伊達家は、三机を北の要所として重視し、番所を設置しました。参勤交代のルートは、一旦半島に上陸し、堀切を越えて三机に入り、再び船に乗り換えるルートが採用されました。中継地として栄え、三机には多くの商家が並び、「三机百軒」と呼ばれる町屋が形成されました。

明治以降

1868年には、宇和島藩兵が箱館征討のため、三机に召集されました。1874年には、御番所跡に三机小学校が開設され、三机郵便局も開設されました。1875年には三机巡査屯所が設置され、後に八幡浜警察署三机分署となり、周辺の村々を管轄しました。1888年には、三机登記所が開設されました。1889年、町村制が施行され、6つの村が合併して三机村が誕生しました。1899年には、缶詰工場と三机銀行が設立されました。1903年には、各字に漁業組合が設立され、1905年には、奥山又三郎が新しい漁法を導入し、漁業がさらに盛んになりました。1907年には、三机港と三津浜港を結ぶ定期航路が開設され、1913年には、三机港と宇品港を結ぶ定期航路も開設されました。1937年には、三机湾が海軍特殊潜航艇の訓練地となりました。1966年には、三机湾に面した須賀公園に九軍神の碑が建立されました。1947年には、三机中学校が開校し、1951年には、三机と八幡浜を結ぶバス路線が開通しました。

1956年、三机村は四ツ浜村と合併し、瀬戸町となりました。

産業

漁業

三机は佐田岬半島の海産物の集散地として発展しました。特に、藩政期から鰯漁が盛んで、三机港には缶詰工場も設置されました。また、鯛の縛網漁も盛んに行われていました。しかし、太平洋戦争を境に、沿岸漁業は衰退しました。

農業

漁業や商業が衰退してからは、農業が主な産業となりました。米、麦、甘藷類などが栽培されていました。甘夏柑などの柑橘類の栽培は、他の地域に比べてやや遅れをとりました。

商業

三机は、佐田岬半島の中でも珍しい良港であり、藩政期には参勤交代の立ち寄り地として栄えました。明治以降も物資の集散地として発展し、回船問屋「魚屋」は200年も続く老舗でしたが、太平洋戦争の影響で廃業しました。戦後、陸路が発達するとともに、港の優位性は失われ、村勢は衰退しました。

交通

鉄道は通っていません。地形的な制約から、陸路の交通は不便で、海上を船で移動することが主な交通手段でした。三机港は、佐田岬半島北側では珍しい深い入り江に位置し、天然の良港として利用されてきました。須賀の浜と呼ばれる砂嘴は、天然の防波堤として機能していました。藩政期には参勤交代の際の立ち寄り地でもありました。戦後には、八幡浜と三机を結ぶバス路線が開通しました。

名所

三机湾: 天然の良港であり、風光明媚な景勝地です。

参考文献

* 『角川日本地名大辞典38愛媛県』

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