三次ピオーネ

三次ピオーネ：広島県三次市が誇る黒い真珠

三次ピオーネは、広島県三次市で栽培されている、地域ブランドとして名高いブドウです。JA広島果実連が管理する地域団体商標として登録されており、三次市によって「みよしブランド」にも認定されています。また、農事組合法人三次ピオーネ生産組合は「黒い真珠」という名称で商標登録を行っています。

三次ピオーネの特徴

三次ピオーネは、その大粒で濃厚な甘みが特徴です。種なしで食べやすく、贈答品としても人気があります。広島県の夏のギフトとして定番であり、そのほとんどが県内で消費されています。

三次市のブドウ栽培の背景

地理的条件

三次市は、中国山地と吉備高原に挟まれた盆地に位置しています。盆地特有の内陸性気候であり、昼夜の寒暖差が大きいことがブドウ栽培に適しています。また、日本海式気候の影響を受けるため、冷涼多雨で冬季には積雪がありますが、南部は瀬戸内海式気候の影響も受けるため、比較的温暖です。江の川流域に位置し、支流の合流点が盆地の中心にあるため、霧が発生しやすい地域です。

土壌は花崗岩風化残留土（真砂土）が広く分布しています。また、古墳が多数点在しており、農地拡大などの土地開発には制約があります。

三次市の農業

三次市の農業は、米作を中心に、1980年代には畜産・野菜、2010年代には鶏卵・果実・乳用牛へと変化してきました。1961年の農業基本法制定以降、米作依存型農業から畜産・果樹生産を導入した複合型農業への転換を進めており、特にブドウの特産化が図られてきました。

三次ピオーネの歴史

ブドウ栽培の導入

三次市でのブドウ栽培は、1960年に水田転換として導入されたのが始まりです。市内最古のぶどう園である上井田ぶどう園は1964年に創業し、当初はマスカット・ベーリーAとデラウェアを栽培していました。1960年代には、市の南部に3軒のブドウ農家が存在していました。

生産団地の造成とピオーネ導入

1968年、広島県が開発調査を開始し、開発可能地を確定しました。県営パイロット事業を立ち上げ、県と三次市が協議する中で、ブドウ・野菜・酪農の農業地を造成することになりました。1974年には、「県営農地開発事業」および「第二次農構事業」として、盆地南部の丘陵地である三次市東酒屋町にピオーネを主体としたブドウ生産団地が造成され、あわせて「三次ピオーネ生産組合」が結成されました。

ピオーネ栽培の苦労と技術確立

三次ピオーネ生産組合の組合員は、専業農家とUターン組で構成され、全員が果樹栽培の経験はありませんでした。当初、主力品種は巨峰で計画されていましたが、広島県立果樹試験場から品質の高い品種としてピオーネを勧められました。しかし、ピオーネは県立果樹試験場で導入されて2年目のことであり、栽培技術が確立していなかったため、試験場の中でも反対意見がありました。それでも、組合員が熱意をもってピオーネを導入しました。

生産団地の土壌は強粘土で痩せており、地理的に雨が多いなどの困難がありました。普及指導所が主体となって深耕による土づくりや施肥技術の工夫を続け、栽培技術を確立していきました。栽培研究と商品化に2年を要したため、経済的に耐えられなかった組合員が何人か脱退しました。当時、生食用ブドウといえば巨峰であり、ピオーネ自体の知名度がなかったため、販売には苦労し、組合員自らが販路を開拓していきました。

生産拡大とブランド化

1982年、三次ピオーネ生産組合は組織を再編し、班体制による相互援助方式を確立すると、生産量が急激に増加しました。その後、種なし大粒（ニューピオーネ）生産技術を独自に開発し、加温ハウスを活用することによって、質量ともに安定するようになりました。この頃から、他の地域でもピオーネが栽培されるようになりました。例えば、双三郡三良坂町（現・三次市）では、灰塚ダム建設に伴い農地が減少したため、その代替産業としてブドウ栽培が注目され、町協力のもと1988年に「みらさかピオーネ生産組合」が発足し、生産団地が造成され栽培を始めています。

さらに、複数の農業賞を受賞したこともあり、ブランド化に成功しました。2010年には、地域団体商標に登録されました。

三次ピオーネと地域文化

黒い真珠・三次ピオーネの日

三次ピオーネ生産組合は、9月6日を「黒い真珠・三次ピオーネの日」と制定しています。これは、「クロ」の語呂合わせと、この時期に露地物が最盛期を迎えることに由来します。

広島三次ワイナリー

三次市でのブドウ栽培が軌道に乗ると、規格外ブドウも増加しました。その用途としてジュースやジャムを製造していましたが、当時の市長がワインの生産を提案し、1987年に市を中心に「ワイン工場建設委員会」が発足しました。1991年には第三セクターによる（株）広島三次ワイナリーが設立され、1994年に開業しました。広島三次ワイナリーは、三次ピオーネ生産組合と同様に三次市東酒屋町にあります。

サンフレッチェ広島とのコラボ

三良坂ピオーネ生産組合は、JA広島果実連協力のもと、サンフレッチェ広島とコラボ企画を立ち上げています。サンフレッチェのチームカラーはピオーネと同じ紫であることから、以下の企画が行われています。

選手によるブドウの収穫体験
三良坂町内のサッカークラブの選手たちがスタジアム観戦、試合会場で生産組合がブドウ販売
* 三良坂の直売所では、露地ピオーネに「サンフレッチェ ホームタウンサポート」シールを掲示

三次ピオーネは、地域の気候と人々の努力によって育まれた、三次市を代表する特産品です。その歴史と地域との関わりを知ることで、より深く三次ピオーネの魅力を感じることができるでしょう。

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