三浦典子

三浦 典子

三浦 典子（みうら のりこ）氏は、1946年に生まれた日本の社会学者です。専門分野は都市社会学および東アジア社会論であり、長年にわたり山口大学にて研究・教育活動に従事し、同大学の名誉教授の称号を授与されています。

経歴

氏の学術的な道のりは、出身地である山口県防府市から始まりました。九州大学大学院文学研究科の博士課程に進み、そこで専門的な知見を深めます。特に、「流動型社会の研究」と題されたその後の博士論文につながる研究は、氏の社会構造分析の基礎を築きました。1992年には、この研究成果が評価され、博士（文学）の学位を取得しています。

教育者としてのキャリアは、山口大学からスタートしました。まず助教授として教壇に立ち、その後教授に昇任。都市社会の変容、東アジア地域の社会問題など、自身の専門分野に関する講義や研究指導を行い、多くの後進を育成しました。教育・研究活動への貢献は大きく、2011年に定年を迎えた後も、大学はその功績を称え、名誉教授の称号を授与しました。

研究分野と業績

三浦氏の研究は、大きく分けて都市社会学と東アジア社会論の二つの柱に基づいています。都市社会学においては、高度に発展し、常に変化し続ける現代都市の構造やそこで暮らす人々の生活、コミュニティのあり方について詳細な分析を行いました。特に、「流動型社会」という視点から、人口の移動や社会関係の希薄化といった現象を捉え、その社会的な影響を考察しました。

一方、東アジア社会論では、日本だけでなく台湾など近隣諸国の社会構造や文化、歴史的背景を踏まえた社会現象を研究しました。高齢化、地域社会、ボランティア活動といった具体的なテーマを取り上げ、比較社会学的な視点も交えながら、各地域の課題や特性を明らかにしました。

これらの研究成果は、多数の著作や共編著として発表されています。代表的な単著としては、学位論文を基にした『流動型社会の研究』（1991年）があり、これは社会構造の変化を捉える氏の基盤となる著作です。また、企業が社会に対して持つ役割や、地域コミュニティとの連携について考察した『企業の社会貢献とコミュニティ』（2004年）、さらには現代アートを活用した地域活性化の試みに着目した『企業の社会貢献と現代アートのまちづくり』（2010年）などがあります。これらの著作は、社会学の知見を現代社会の具体的な課題に応用しようとする氏の実践的な姿勢を示しています。

共編著も幅広く手掛けており、『生活構造』（1986年）のような社会学の基礎的なテーマに関するものから、『地域社会学の現在』（2002年）のように学問分野の動向をまとめたもの、さらに東アジア、特に台湾に焦点を当てた『台湾の都市高齢化と社会意識』（2010年、編著）や『日本と台湾におけるボランタリズムとボランティア活動』（2016年、共編著）、そして地域再生の可能性を探る『地域再生の社会学』（2017年、共編著）などがあります。これらの共同研究を通じて、氏の研究ネットワークは広がり、多様な視点から社会現象へのアプローチを試みました。

まとめ

三浦典子氏は、都市化が進展し、国際的なつながりが深まる現代社会において、都市社会学と東アジア社会論という二つの専門分野から、社会の構造変化や地域が抱える課題を深く探究した社会学者です。その研究は多岐にわたり、多くの著作としてまとめられています。山口大学名誉教授として、その学術的貢献は今後も多くの研究者や学生に影響を与え続けることでしょう。

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