三浦宏文

三浦 宏文（みうら ひろふみ）

日本の工学分野に大きな足跡を残した三浦宏文（みうら ひろふみ）は、1938年3月17日に徳島県徳島市に生を受けました。2020年3月5日に81歳で逝去するまで、工学者として教育・研究に深く携わり、ロボティクス、マイクロ技術、スペーステクノロジー、メカトロニクスといった幅広い専門分野で革新的な成果を生み出しました。東京大学名誉教授であり、工学院大学の学長も務めるなど、日本の学術界における要職を歴任しました。

三浦氏の学究生活は東京大学から始まりました。同大学工学部機械工学科を卒業後、大学院の数物系研究科機械工学専攻で博士課程を修了し、工学の道を深く探求しました。大学院修了後は東京大学の助教授として教鞭を執り、研究活動を開始しました。

キャリアにおいては、アメリカ航空宇宙局（NASA）での客員研究員としての経験も有しており、国際的な視野と先進技術への理解を深めました。帰国後は東京大学工学部の教授に昇進し、多くの後進を育成しながら、自身の研究室で画期的な研究を進めました。長年にわたる東京大学での貢献により、退官後には名誉教授の称号が授与されました。

教育・研究機関での活動に加え、三浦氏は日本の工学コミュニティにおいてリーダーシップを発揮しました。特に、日本ロボット学会では1993年から1995年にかけて会長を務め、学会の発展とロボット技術の普及に尽力しました。また、2003年から2009年まで工学院大学の学長として大学経営に携わり、教育環境の整備や研究力の向上に貢献しました。

三浦氏の研究の中でも特筆すべきは、生物の動きを模倣するバイオインスパイアードロボティクスの分野です。彼は昆虫の複雑な運動メカニズムに着想を得て、それを工学的に分析し、実際のロボット設計に応用する研究に注力しました。昆虫のように多脚で不整地を移動できるロボットや、小型で複雑な動作が可能なロボットの開発は、その後のロボット技術の多様化に影響を与えました。このような生物の知恵を取り入れた研究は、生命科学と工学の境界領域を開拓するものでした。

長年の献身的な研究と教育、そして学術界への貢献は高く評価され、多くの栄誉に輝きました。主な受賞歴には、1989年11月の日本ロボット学会論文賞、1997年10月の東京都科学技術功労賞、2011年4月の日本機械学会賞（論文）があります。さらに、2017年秋には、学術研究への顕著な功績により瑞宝中綬章を受章しました。

三浦宏文氏は、老衰のため2020年3月5日に東京都内で静かに息を引き取りました。享年81歳でした。その死没日をもって、生前の輝かしい業績と国家への貢献に対し、従四位の位階が追贈されました。日本のロボティクス、メカトロニクス、マイクロ技術といった分野における彼の先駆的な研究と、次世代の研究者を育成した功績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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