三菱石炭鉱業

三菱石炭鉱業株式会社：日本の石炭産業を支えた企業の歴史

三菱石炭鉱業株式会社は、かつて国内の石炭採掘と地方鉄道事業を営んでいた企業です。三菱鉱業セメント株式会社（現三菱マテリアル株式会社）の子会社として、日本の石炭産業において重要な役割を担っていました。その歴史は、戦後の日本の産業構造変化と深く関わっています。

昭和30年代からの産業構造変化と企業の対応

1955年（昭和30年）の石炭鉱業合理化臨時措置法の施行により、日本の石炭産業は大きな転換期を迎えました。中小炭鉱の閉山や合理化が進む中、三菱鉱業株式会社も各炭鉱の合理化・縮小を進める必要に迫られました。

この流れの中で、1965年（昭和40年）、一般炭を産出する美唄鉱業所は美唄炭礦株式会社として独立しました。一方、鉄鋼コークス用の原料炭を産出する大夕張地区では、新たな炭鉱開発が進められ、1969年（昭和44年）には三菱鉱業より大夕張鉱業所、南大夕張開発事務所、大夕張鉄道線が分離・譲渡され、三菱大夕張炭礦株式会社が設立されました。九州地区でも、高島鉱業所と端島鉱業所を統合した三菱高島炭礦株式会社が設立されました。

合併と閉山、そして終焉

その後、1971年（昭和46年）7月、美唄炭礦株式会社は三菱大夕張炭礦株式会社と合併し、三菱大夕張炭礦株式会社に社名変更されました。しかし、1972年（昭和47年）4月には美唄鉱業所が閉山、1973年（昭和48年）6月には大夕張鉱業所も閉山しました。同年12月、三菱大夕張炭礦株式会社と三菱高島炭礦株式会社は合併し、三菱石炭鉱業株式会社が設立されました。

しかし、国内炭の需要減少は止まらず、1986年（昭和61年）には高島鉱業所、1990年（平成2年）には南大夕張鉱業所が閉山しました。これにより、三菱による日本の石炭採掘事業は終焉を迎えました。南大夕張鉱業所閉山後は、南大夕張炭鉱株式会社に社名変更し、清算業務が行われました。

三菱石炭鉱業株式会社の歴史的役割

三菱石炭鉱業株式会社は、日本の高度経済成長期における石炭産業の隆盛と、その後の衰退という歴史的転換期を生き抜いた企業です。同社の歴史は、日本の産業構造の変化、エネルギー政策の転換、そして地域社会への影響など、多角的な視点から考察する必要がある重要な事例と言えるでしょう。その事業内容や歴史は、日本の近代化、そして石炭産業の歴史を理解する上で重要な要素となっています。同社が関わっていた大夕張地域や高島地区など、炭鉱閉山後の地域再生についても、歴史的観点から重要な研究対象となるでしょう。

関連文献

『三菱鉱業社史』 三菱鉱業セメント株式会社刊
『RM　LIBRARY47 三菱鉱業大夕張鉄道』 奥山道紀・赤城英昭著（ネコパブリッシング刊）ISBN 4-7770-5002-5

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