三越鹿児島店

三越鹿児島店の歴史：丸屋から三越、そして終焉へ

三越鹿児島店は、鹿児島県鹿児島市呉服町に存在した百貨店です。その歴史は、前身である呉服商「丸屋」の創業から始まり、百貨店としての隆盛、そして閉店に至るまで、鹿児島県の商業史を語る上で欠かせない存在でした。

丸屋デパートの誕生と苦難

1892年（明治25年）に呉服商として創業した丸屋は、1961年（昭和36年）に呉服町に地上3階、地下1階の「丸屋デパート」をオープンしました。これは、鹿児島市内で山形屋、大見高島屋に次ぐ3番目の百貨店であり、地域経済に新たな風を吹き込みました。しかし、伝統的な一番店である山形屋への遠慮から、一流の商品を卸してもらえないという苦境に立たされていました。

1967年（昭和42年）には6階建てに増築するなど事業拡大を図りましたが、依然として卸業者との関係に悩まされ、経営は決して順風満帆とは言えませんでした。この状況を打破するため、丸屋は大胆な戦略を打ち出すことになります。

三越との提携、そして「鹿児島三越」へ

1973年（昭和48年）、丸屋は都会的なイメージを取り入れるため、三越と業務提携を結びました。さらに、1983年（昭和58年）には資本提携も行い、翌1984年（昭和59年）には「鹿児島三越」へと商号を変更、10月25日に新たなスタートを切りました。1988年（昭和63年）にはティファニーが九州で初出店するなど、新たな展開も見られました。

丸屋時代は年間100億円の売上だったものが、三越となってからは順調に売上を伸ばし、1995年（平成7年）にはピークとなる190億円に達しました。この間、ライバルである山形屋も増床を行うなど、激しい競争が繰り広げられ、この状況は「鹿児島百貨店戦争」と称されました。

衰退期、そして閉店へ

しかし、その後、三越鹿児島店は売上低迷に苦しむことになります。鹿児島市では天文館が最大の繁華街であり、買い物客は天文館に集中していましたが、郊外型店舗の登場により、この構図が崩れ始めました。

特に大きな影響を与えたのが、2004年（平成16年）に開業した鹿児島中央駅の駅ビル「アミュプラザ鹿児島」です。これにより、天文館地区から鹿児島中央駅地区へと商業の中心が移動し、2007年（平成19年）にはイオン鹿児島ショッピングセンターもオープンするなど、天文館全体が危機に晒されました。

この危機に対し、天文館地区では地域全体の協調が進められました。2007年9月には、ライバルであった山形屋と初めて協力して合同イベント「百華繚乱祭」を開催し、また、鹿児島市電の天文館通電停で降りる客の運賃を無料化するなど、集客のための様々な試みが行われました。

三越鹿児島店自身も、2007年3月に7階にフードテーマパーク「スイーツ庭園」を新設するなど、集客を図りましたが、効果は限定的でした。大規模な改装を行っても採算が取れる見込みが立たなくなったため、2008年（平成20年）9月に閉店が発表され、2009年（平成21年）5月6日、丸屋時代から数えて127年の歴史に幕を閉じました。

その後

店舗の跡地は、三越へ土地・建物を賃貸していた丸屋が買収し、改修を行った上で、2010年（平成22年）4月28日に複合型商業施設「マルヤガーデンズ」として新たに開業しました。

また、道路を挟んで存在していた三越鹿児島店・別館は取り壊され、現在はファミリーマート（南九州ファミリーマート運営）が営業しています。


三越鹿児島店は、鹿児島県の商業史において重要な役割を果たしました。その盛衰は、地域経済の変化と百貨店業界の課題を映し出す鏡と言えるでしょう。

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