三重建設図書館

三重建設図書館：建設業界の常識を覆した、開かれた図書館

1992年2月3日、三重県津市に「三重建設図書館」が開館しました。これは、三重県建設業協会が設立30周年記念事業として建設した私立図書館です。建設業界のイメージ向上を図るという、ユニークな目的で設立されたこの図書館は、専門書だけでなく一般書も広く所蔵し、建設業界関係者だけでなく、一般市民にも門戸を開放していました。

設立の背景と目的

建設業界は「3K（きつい、汚い、危険）」というイメージが強く、一般市民からの理解や関心が低いという課題がありました。三重県建設業協会は、このイメージを払拭し、業界への理解を深めてもらうため、図書館の建設という異色の手段を選びました。

建設図書館の設立は、協会長である田村憲司氏の発案によるものです。1991年5月の役員会で決定され、同年7月に着工。三重大学工学部教授や建設省職員、県庁職員、業界団体役員など16名からなる図書選考委員会が、蔵書の選定にあたりました。これは、中小企業や建設業を目指す学生への支援という目的も兼ねていました。

1億円をかけた図書館建設は1991年12月に完了。開館式典には約200人が出席し、三重県知事や協会長によるテープカットが行われました。開館時の蔵書数は約7,000冊で、専門書以外にも文学書や、青函トンネル建設工事の記録ビデオ、建設技術に関するソフトウェアなども所蔵していました。

図書館の運営と特徴

三重建設図書館は、鉄筋コンクリート造3階建ての建物でした。1階は駐車場への進入路と書庫、2階と3階に受付やAVコーナー、休憩コーナー、書架が配置されていました。

この図書館の大きな特徴は、一般利用者にも門戸を開放していた点です。会員企業の従業員以外の利用者も半数近くを占めており、一般市民への認知度向上には、三重テレビ放送で放映されたテレビCMが大きく貢献していました。CM放映後、来館者数は増加し、図書館は地域社会に溶け込んだ存在となっていました。

図書館の運営は、専任職員1名と兼務職員2名の計3名体制で行われていました。独自の分類法を用いて蔵書を管理し、コンピュータによる検索システムも導入していました。貸出は無料でしたが、利用者カードの発行には100円が必要でした。

蔵書と利用状況

開館後も、図書選考委員会は年間約1,000冊の新規図書を選定し、蔵書数を増やし続けました。年間の図書購入予算は700～800万円で推移していました。10年以内に2万冊を超えることを目標としていましたが、2004年度の蔵書数は18,545冊にとどまりました。

休館

2006年9月30日、三重建設図書館は事実上閉館（休館）となりました。目標とした蔵書数に到達しなかったことや、運営上の理由などが背景にあったと推測されますが、14年間の活動は、建設業界のイメージ向上に貢献するとともに、地域住民に愛される図書館として記憶されています。

まとめ

三重建設図書館は、建設業界のイメージ向上というユニークな目的で設立され、一般市民にも広く開放された、画期的な試みでした。その取り組みは、業界の枠を超えた情報発信や地域社会への貢献という点において、多くの示唆を与えてくれるでしょう。休館となった現在も、その存在は、建設業界の広報活動や地域社会との連携について考える上で重要な事例として、記憶に残っています。

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