三重津海軍所

三重津海軍所の概要

三重津海軍所（みえつかいぐんしょ）は佐賀県佐賀市に位置し、佐賀藩が1858年に設立した蒸気船の修理・造船施設です。この場所は、当時の西洋船の運用を支えるための教育機関としても機能していました。特に、国産初の実用蒸気船「凌風丸」の建造が行われたことでも知られています。2000年代に入ってから発掘や文献調査が進められ、2013年に国の史跡として指定されました。また、2015年には「明治日本の産業革命遺産」として、世界文化遺産にも登録されています。三重津という名称は、「三重」とは佐賀市の地域名であり、海軍所が置かれた港を指しています。この名称は三重県津市とは関連がないため、注意が必要です。

地理的環境

三重津海軍所は、九州の筑後川の支流となる早津江川の河口に位置し、海軍所があった場所は佐賀藩領の南東端にあたります。対岸には福岡県大川市の大野島があり、この地域は藩政時代においては柳川藩の領地でした。現在、この地域は公園として整備されており、海軍所時代の風景をほぼ保持しています。

海軍所の設立と運営

三重津海軍所は、佐賀藩（鍋島家）が1858年に設立したもので、当初は既存の「御船屋」を拡張する形で運営されました。1859年には幕府の長崎海軍伝習所が閉鎖され、そこに通っていた藩士たちのための教育機関としても機能を拡充しました。海軍所では、航海、造船、武器の技術教育が行われ、またオランダ製の木造帆船や国産の蒸気船の修理・造船が行われました。1865年には、国内で初めて実用的な蒸気船「凌風丸」が完成しました。

三重津海軍所の施設

現在の三重津海軍所跡は、「船屋地区」、「稽古場地区」、「修覆場地区」の三つに分けられています。「船屋地区」は、海軍所が設立される以前から存在する和船運用施設です。蒸気船の建造計画があった際には、この地区に工場や材木置場の建設が検討されていましたが、実際には実行には移されませんでした。「稽古場地区」は、銃器を用いた調練のための施設で、「修覆場地区」では洋式船の金属部品の製作と修理が行われました。

発掘調査の成果

三重津海軍所の発掘調査は2009年から2014年にかけて行われ、特に「修覆場地区」からは多くの遺物が出土しました。熊本地震での影響を受けながらも、海軍所の運営に関する重要な情報が確認されています。特に、作業場からは様々な規格の鉄鋲が発掘され、蒸気船のボイラー組み立てに用いられたと考えられています。また、ボルトのネジ山が残っていることから、英国など当時の海外技術を取り入れた製品が製造されていたことがわかります。

現存する国内最古のドライドック

三重津海軍所跡には、日本国内で現存する最古のドライドックが存在します。この遺構の大きさと工法は、当時の技術と地域の土木技術の結びつきを示す重要な証拠となっています。特に、木材と粘土を用いた工法は、他の遺構とは異なる独自の技術が用いられていることを物語っています。

佐賀藩海軍の食器と他の遺物

海軍所からは、肥前磁器が多数出土しており、特に「灘越蝶文」と呼ばれる独特の文様が施された食器が注目されています。この文様は、海軍所の特注品であると言われており、藩の海軍のアイデンティティを表すものとして価値があります。また、洋式船用のロープや大量の石炭も出土しており、当時の運用状況を明らかにしています。

現在の状況と施設

三重津海軍所の遺跡は現在、三重津海軍所で活躍した佐野常民を記念した公園として整備されています。訪れる者は資料館を通じて当時の状況や海軍所の役割を知ることができるようになっており、地域の歴史的な価値を後世に伝えています。さらに、公共交通機関を利用してアクセス可能で、佐賀市とその周辺の観光にも役立っています。

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