上井久義

上井久義

日本の民俗学者である上井久義氏は、1932年に生を受け、2019年6月7日にその生涯を終えました。長年にわたり関西大学で教育と研究に携わり、文学博士（関西大学）の学位を取得後、同大学の名誉教授となりました。

学歴とキャリア

上井氏の学問への道は、大阪学芸大学を卒業したことから始まります。その後、関西大学大学院文学研究科の修士課程を修了し、民俗学及び関連分野の研究を深めました。大学院修了後、関西大学に奉職し、以降、同大学を拠点に多くの研究者を育て、自身の研究を進めていきました。

研究分野と貢献

上井氏の研究領域は広範にわたり、特に民俗社会人類学という視点を通じて、日本の地域社会や集団の構造、そこにおける習俗や儀礼の意味を深く探求しました。人々の生活に根差した民俗信仰についても精力的に研究を進め、現代社会にも息づく古い信仰の形とその変容を追い求めました。また、日本古代の親族構造とそれに伴う祭祀のあり方についても造詣が深く、歴史時代の文献と民俗資料を結びつけ、家族や血縁といった社会の根幹をなす単位がどのように形成され、祭祀を通じて維持されてきたのかを明らかにしました。加えて、人が生を終えることに関する習俗、すなわち葬送や墓制といったテーマにも焦点を当て、その研究成果は集成としてもまとめられています。

主要著作

これらの多岐にわたる研究成果は、数多くの著作として発表されました。

主要な単著としては、研究の出発点ともいえる『民俗社会人類学』（創元社、1973年）があります。特定テーマを深掘りした研究として、『民俗信仰の伝統』（人文書院、1985年）や、『日本古代の親族と祭祀』（人文書院、1988年）は重要な位置を占めます。長年の研究活動の集大成として、2005年から2007年にかけて清文堂出版から全7巻に及ぶ『上井久義著作集』が刊行されました。

共著としては、上井輝代氏と共に執筆した『日本民俗の源流』（創元社、1969年）があり、編著としては、『葬送墓制研究集成』の第5巻（名著出版、1979年）を手がけています。さらに、共編著として横田健一氏と共に『紀伊半島の文化史的研究 民俗編』（関西大学出版部、1988年）を世に送り出しました。

栄誉

長年の学術研究と教育への顕著な貢献が認められ、瑞宝小綬章を受章しています。

晩年と死去

上井氏は晩年を過ごし、2019年6月7日、兵庫県西宮市内の病院にて87歳で逝去されました。

学術的遺産

上井久義氏が日本の民俗学及び社会人類学の分野に残した広範な研究業績は、後続の研究者たちに多大な影響を与え続けています。特に、民俗的事象を単なる習慣としてではなく、社会構造や歴史的変遷と関連づけて深く分析する視点は、その後の日本民俗学の発展において重要な指針となりました。氏の著作は、現代においても日本の文化や社会を理解するための貴重な資料となっています。

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