上東門

上東門（じょうとうもん）は、平安京大内裏を囲む外郭門の一つです。大内裏の東面、陽明門の北に位置し、大宮大路に面して土御門大路へと続いていました。外郭十二門には数えられませんが、他の門と同様に重要な役割を果たし、左衛門府が警固を担当していました。

特徴的なのは、他の門とは異なり、屋根を持たない簡素な構造であった点です。そのため、「土御門」とも呼ばれていました。これは、築地を切り開いただけの簡素な門であったためと考えられています。

上東門の北側には、源雅信の邸宅がありました。雅信の死後、娘婿である藤原道長がこの邸宅を継承し、邸宅は上東門から伸びる土御門大路に面していたことから、「上東門殿（第・院）」または「土御門殿（邸・院）」と呼ばれるようになりました。道長の長女であり、雅信の外孫にあたる藤原彰子が里邸として用いたことから、彼女の女院号は「上東門院」と号されました。

この門の様子は、『枕草子』にも描かれています。「五月の御精進のほど」の一節には、屋根がないために雨の日に通行が困難であったことが記されており、「この土御門しも、かうべもなくしそめけんと、けふこそいとにくけれ」という記述から、当時の人々が不便に感じていた様子がうかがえます。

上東門は、平安京における交通の要所であるだけでなく、藤原氏の権勢を示す象徴的な場所でもありました。その簡素な構造とは裏腹に、歴史の中で重要な役割を果たした門と言えるでしょう。

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