上海ブルース

上海ブルース：運命の歯車が織りなす、1937年上海の物語

1984年、香港で制作された映画『上海ブルース』（原題：上海之夜）は、ツイ・ハーク監督による傑作として知られています。ケニー・ビー、シルヴィア・チャン、サリー・イップといった実力派俳優たちの熱演が光る本作は、1937年の上海を舞台に、戦争と愛、そして運命の出会いを描いた物語です。香港国際映画祭においても高く評価され、1984年のトップ10チャイニーズ映画に選出されました。

物語は、1937年、日本軍の侵攻が迫る上海のフランス租界にあるナイトクラブで始まります。主人公ドレミは、叔父と共にピエロとして働いていました。迫り来る戦争の影を肌で感じ取ったドレミは、叔父と共にナイトクラブを去り、兵士となる決意をします。その夜、日本軍が上海に侵攻。避難する最中、ドレミは一人の女性と出会います。橋の下で、彼は女性に兵士になることを告げ、戦後、再びここで会うことを約束します。しかし、混乱の中、二人は引き離されてしまいます。

それから10年後、1947年。上海で叔父と共に楽器隊を組んでいたドレミは、駅で降り立った女性に10年前の女性の姿を見出し、後を追いかけます。スリに遭った彼女を見つけ、ドレミは金を奪還しますが、女性は気づかぬまま人力車で去ってしまいます。

一方、ナイトクラブでパフォーマーとして働くシュウは、ある男性を探し続けていました。ライバルの「デカパイ」と呼ばれる女性との争いや、デカパイのヒモからの脅迫など、困難な日々を送っています。川辺で佇むシュウの前に、昼間にドレミが追いかけていた女性が現れます。自殺を図ろうとしていると勘違いしたシュウは、女性を止めようとしますが、逆に川に突き落とされてしまいます。女性はシュウを助け上げ、彼女の住むアパートへと向かいます。そこには、部屋へ荷物を運び込もうとするドレミがいました。ドレミとシュウは、一悶着の末、朝を迎えます。

洗濯物を干していたドレミは、シュウが連れてきた女性と出会います。その女性は「踏み台」と名乗り、ドレミは彼女が10年前の約束の相手だと考えます。しかし、10年前の出来事を話しても、女性は全く覚えていませんでした。人違いだと気づいたドレミでしたが、「踏み台」はドレミに一目惚れし、運命の人だと信じ始めます。

『上海ブルース』は、戦争という激動の時代を背景に、それぞれの運命に翻弄される人々の姿を繊細に描き出しています。ドレミと女性の10年前の約束、そして新たな出会いが織りなす物語は、観る者の心に深い感動を与えます。戦争の悲劇、愛と別れ、そして運命のいたずら。様々な要素が複雑に絡み合い、忘れられない名作となっています。ツイ・ハーク監督の卓越した演出、そして豪華キャストの演技が一体となり、1937年の上海の街並みを鮮やかに、そして切なく蘇らせています。この映画は、単なる恋愛映画ではなく、時代背景と絡み合った人間ドラマとして、高く評価されるに値する作品です。 時代劇としての側面も持ち合わせ、当時の上海の風俗や文化、社会情勢も垣間見ることができます。 歴史とロマンスが融合した、忘れがたい映画体験を提供してくれるでしょう。

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