上甫木昭春

上甫木昭春（かみほぎ あきはる）は、1954年に鹿児島県で生まれ、日本の造園学分野において教育、研究、そして地域社会への貢献を続けている著名な学者です。現在は大阪府立大学大学院生命環境科学研究科の教授として教鞭を執り、後進の育成にあたるとともに、学術博士としての深い知見を活かした研究活動を展開しています。

彼の研究の中心となる専門分野は、緑地計画および地域生態学です。緑地計画は、都市や地域における緑の空間をどのように配置し、管理・活用していくかを計画する学問であり、人々の生活の質の向上や生態系の保全に不可欠です。一方、地域生態学は、特定の地域の自然環境における生物間の関係や、生態系と人間活動との相互作用を詳細に分析する分野です。上甫木氏はこれら二つの専門分野を融合させ、より実践的かつ地域の実情に根差した環境問題の解決策を探求しています。

その学術的背景を基盤に、上甫木氏は社会貢献活動にも精力的に取り組んでいます。特に、地方自治体の政策決定プロセスへの参画は顕著であり、大阪府、兵庫県、神戸市、豊中市、吹田市、大阪狭山市など、関西圏を中心とした数多くの自治体において、重要な審議会の委員を歴任しています。具体的には、土地利用の適正化を議論する土地利用審査会、河川環境の保全や治水を検討する河川審議会、都市の将来像を描く都市計画審議会、環境保全策を協議する環境審議会、そして地域の歴史や文化を守る文化財審議会など、多岐にわたる分野で専門家としての意見具申を行ってきました。これらの活動を通じて、地域の持続可能な発展に向けた政策立案に貢献しています。

また、地域社会における自然環境の保全・再生に向けた実践的な活動も積極的に支援・推進しています。例えば、「大阪湾見守りネット」では、広大な生態系である大阪湾の環境状況を把握し、その再生に向けた取り組みに関与しています。さらに、「阪神・都市ビオトープフォーラム」では、都市における生物多様性の保全を目指し、身近な場所に生き物の生息空間（ビオトープ）を創出・維持するための啓発や技術交流を行っており、市民や専門家との連携を深めています。

上甫木氏の学術的成果や実践経験は、複数の著作にもまとめられています。主な分担執筆書としては、学校という身近な場所でのビオトープづくりの意義や課題を検証した『検証・学校ビオトープ』（大阪公立大学共同出版会、2009年）、大阪湾の豊かな自然環境の現状と、その持続的な再生に向けた取り組みを紹介する『大阪湾の自然と再生』（大阪公立大学共同出版会、2008年）があります。また、日本の原風景ともいえる里山の生態系について、その成り立ちや保全の重要性を生態学的な視点から解説した『生態学からみた里やまの自然と保護』（講談社、2005年）や、農学の知見を地域社会が抱える様々な問題解決にどう応用できるかを探る『農学から地域を考える』（大阪公立大学共同出版会、2003年）、そして、私たちを取り巻く身近な森に隠された多様な自然の営みを、散策を通して発見する喜びを伝える『身近な森の歩き方』（文英堂、2003年）などがあります。これらの著作は、専門家だけでなく一般の読者に対しても、緑地や生態系、地域環境への理解を深める重要な手引きとなっています。

加えて、彼は学術界における活動にも貢献しており、平成26年度および平成27年度には、日本の造園学分野を代表する学術団体である日本造園学会の関西支部で支部長を務め、同学会の発展と関西地域における造園学の研究・普及活動を牽引しました。

上甫木昭春氏は、造園学者として、教育、研究、そして地域に根差した多岐にわたる活動を通して、日本の緑地環境保全と地域生態学の発展に大きく貢献しています。彼の活動は、学術的な知見を社会の実践に結びつけることの重要性を示しており、今後の持続可能な社会づくりにおいてもその役割は大きいと言えるでしょう。

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