上田紀行

上田紀行：文化人類学者、癒しの探求と現代社会への提言

上田紀行（うえだ のりゆき）は、1958年5月4日生まれの日本の文化人類学者です。東京工業大学の特命教授であり、以前は同大学の副学長も務めていました。専門は文化人類学で、特に宗教、癒やし、社会変革に関する比較価値研究に取り組んでいます。岡山大学で博士（医学）の学位を取得しています。

研究と活動

上田紀行の研究は、スリランカの民族仏教に焦点を当て、「癒し」という概念をいち早く提唱したことで知られています。彼の研究は、伝統的な宗教が現代社会においてどのように機能し、人々の心のケアに貢献できるかを考察しています。また、現代日本の社会が抱える閉塞感や課題に対し、文化人類学的な視点から積極的に提言を行っています。

経歴

東京都出身の上田紀行は、筑波大学附属駒場高等学校を経て、東京大学教養学部文化人類学科を卒業。東京大学大学院総合文化研究科文化人類学専攻博士課程を単位取得退学後、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程を修了し、博士（医学）を取得しました。

1993年から1996年まで愛媛大学教養部助教授を務めた後、1996年4月より東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻助教授に就任。その後、同大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻教授を兼任しました。この間、国際日本文化研究センター助教授（1994～1997年）、東京大学文学部助教授（2003～2005年）も併任しています。2012年2月に東京工業大学リベラルアーツセンター教授となり、2016年から2022年まで東京工業大学リベラルアーツ研究教育院長を兼務、2022年より東京工業大学副学長を兼務。2024年3月末をもって退職し、東京工業大学名誉教授となりました。

人物

上田紀行は、2005年4月から2006年3月までアメリカに渡り、スタンフォード大学仏教学研究所フェローとして、「今の仏教は現代的問いに答え得るか」というテーマで全20回の講義を行いました。また、日本仏教の再活性化運動にも関わっており、若手僧侶の会合「ボーズ・ビー・アンビシャス！！」のアドバイザーも務めています。

親族としては、母が翻訳家の上田公子、妻がアナウンサーの武内陶子、従兄弟に春風亭小朝がいます。

著作

上田紀行は、数多くの著書を出版しており、その内容は宗教、癒し、社会問題など多岐にわたります。主な著書には、以下のようなものがあります。

『覚醒のネットワーク』（1989年）
『スリランカの悪魔祓い―イメージと癒しのコスモロジー―』（1990年）
『癒しの時代をひらく』（1997年）
『生きる意味』（2005年）
『人生の＜逃げ場＞』（2017年）
『愛する意味』(2019)
* 『立て直す力』(2019)

これらの著書を通じて、上田紀行は現代社会における仏教の役割や、心のケアの重要性を説いています。また、社会の構造的な問題にも目を向け、個人がどのように生きるべきかという問いを投げかけています。

メディア出演

上田紀行は、テレビやラジオにも多数出演しており、その知見を広く社会に発信しています。主な出演番組としては、『現代人と癒し』（NHK教育）、『サンデープロジェクト』（テレビ朝日）、『朝まで生テレビ!』（テレビ朝日）、『クローズアップ現代』（NHK総合）、『BSブックレビュー』（NHK BS）、『Q～わたしの思考探求』（NHK教育）などがあります。また、『Live News it!』（フジテレビ）ではコメンテーターを務めていました。

まとめ

上田紀行は、文化人類学者としての専門知識と、現代社会に対する深い洞察力を持ち合わせた人物です。彼の研究や著作は、私たち自身の生き方を見つめ直し、より豊かな人生を送るための示唆に富んでいます。現代社会における「癒し」の重要性を問い続け、仏教の現代的な意義を追求する上田紀行の活動は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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