上神主・茂原官衙遺跡

上神主・茂原官衙遺跡について

上神主・茂原官衙遺跡（かみこうぬし・もばらかんがいせき）は、栃木県宇都宮市茂原町と河内郡上三川町に位置する歴史的な官衙遺跡です。この遺跡は国の史跡に指定されており、そこから出土した印象的な刻書瓦は重要文化財として認識されています。

遺跡の位置と環境

本遺跡は、宇都宮市街地の南側に広がり、上三川町の一部にもまたがっています。地理的には、東側に田川、そして西側には姿川が位置し、南北に長い宇都宮・祇園原台地の上に位置しています。特に神主台地と呼ばれる独立した台地の北側にあり、周囲は台地の低地に囲まれています。このような地勢は、官衙遺跡の形成に影響を与えたと考えられています。

近隣には奈良時代に属する他の官衙遺跡も存在し、西下谷田遺跡や多功遺跡が確認されています。これらの遺跡との関連性も考察の対象となっています。

調査の歴史

上神主・茂原官衙遺跡は、奈良時代の人名を刻んだ瓦が出土して以来、古くから注目されていました。長い間寺院跡と誤解され、「上神主廃寺」や「茂原廃寺」とも称されていましたが、1907年には考古学会の和田千吉がこの遺跡を公に紹介しました。その後、20世紀末まで遺跡全体の調査が行われず、遺跡の性格は未解明でした。

1995年には上三川町による本格的な調査が開始され、宇都宮市も1997年から調査に参加しました。2002年までの調査により、遺跡の構造と規模が明らかとなり、良好な保存状態が確認されました。

特に、調査によって出土した人名瓦が、寺院建築ではなく、実は官庁の跡であったことが判明しました。加えて、政庁の跡とみられる大型の掘立柱建物群も発見され、本遺跡は官衙遺跡としての重要性が証明されました。

遺構の特徴

上神主・茂原官衙遺跡は、政庁域、正倉域、北方建物跡群の3つの主要なエリアに分けられます。政庁域には「コ」の字形に並んだ大型の掘立柱建物跡があり、これが政庁の中心部とされています。ここでは、建物の再建があり、建築様式が詳細に研究されています。

正倉域には大型倉庫が確認され、その周囲には多数の建物跡が整然と並び、倉庫の他にも多くの建物群があったことが伺えます。さらに北方建物跡群は、特異な建築様式を持つ建物が特徴的であり、このエリアからは古代の生活状況を垣間見ることができます。

出土品と文化財

遺跡からは土器や瓦が出土していますが、出土遺物の数は多くはありません。特に目を引くのは、人名文字瓦であり、正倉域の大型倉庫の屋根に使用されていたものです。平成の調査では1,200点以上が発見され、重要文化財として認められています。

上神主・茂原官衙遺跡は、官衙としての発展と衰退を4つの時期に分けることができます。この時期ごとに、建物やその役割が変化しており遺跡の性格が変遷してきたことが確認されています。

この遺跡は、独自の文化的背景を持つ河内郡衙の跡として位置づけられていますが、近隣の遺跡との関連性についてもさらなる研究が必要とされています。

結論

上神主・茂原官衙遺跡は、日本の歴史を知る上で非常に重要な遺跡であり、古代文化の深い理解を得るための貴重な遺産です。引き続き、調査や研究が進むことにより、新たな事実が明らかになることが期待されています。

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