上街道 (木曽街道)

上街道の概説

上街道（うわかいどう）は、江戸時代に名古屋城と中山道を結ぶ重要な脇往還です。尾張藩の公用道として設けられ、「木曽街道」としても知られています。この道は、同じく名古屋城と中山道を結ぶ「下街道」との対比から名付けられました。また、上街道は「善師野街道」や「名古屋往還」とも呼ばれるなど、複数の異称をもっています。

歴史的背景

上街道は江戸時代において、岡崎街道や岐阜街道とともに尾張藩が独自に整備した街道の一つです。徳川義直の指示のもと、成瀬氏が元和9年（1623年）にこの道を完成させ、その後寛永11年（1634年）には宿駅制度も導入されました。起点は名古屋宿の伝馬会所ですが、藩の公用道としては名古屋城の東大手門が起点となり、城下の五口の一つである志水口が使われたとされています。

この上街道は中山道に接続する終点を持ち、初めは土田宿がその終着地点でしたが、渡し場の移転に伴い、最終的には今渡が中山道との合流地点となりました。全長は約40キロメートルで、途中に住民のための宿場町として小牧宿、善師野宿、土田宿の3つが存在します。

交通の特徴

上街道の特徴として、軍事的な事情から設計されています。川には橋がなく、升形の地形が多く見られ、道幅は2間（約3.6メートル）に制限されるなど、五街道に準じた作りとなっています。また、名古屋から楽田追分までの区間では稲置街道とルートが重複しており、非常に重要な交通路でした。

上街道は主に武士の往来に使われ、下街道は庶民や旅人、特に善光寺参りの人々が利用することが一般的でした。しかし、名古屋城下や伊勢方面から木曽路へ行くには、下街道の方が地理的に短く、高低差や利便性に優れていたため、武士たちも下街道を選ぶことが多くなりました。これを受け、尾張藩は木曽街道の宿場への助成を行い、1795年には藩士の下街道通行を禁止するなどの規制を試みるも、公用道の維持は難しくなったという歴史があります。

名称の変遷

上街道は、名称の通り下街道との対比で「上街道」あるいは「本街道」として呼ばれることが多いです。また、道中の経由地によって「犬山街道」や「小牧街道」、さらには「善師野街道」や「名古屋往還」などとも称されることがあります。特に小牧宿には尾張徳川家の別荘があり、藩主の移動もあったため「御殿様街道」として知られることもありました。その他にも「御成道」や「成瀬街道」といった異なる名称も使用されました。

宿場とその位置

上街道の始点は名古屋城の東大手門に設定され、以下の宿場が設けられました：
1. 小牧宿（愛知県小牧市）
- 追分：楽田（愛知県犬山市）
- 稲置街道と分岐
2. 善師野宿（愛知県犬山市）
3. 土田宿（岐阜県可児市）

上街道の終点は太田の渡し（岐阜県可児市）であり、中山道と接続しています。かつて土田宿が終点であった時期もありましたが、渡し場が移動することによって、現在の終点は今渡となっています。

上街道は名古屋城下と中山道をつなぐ重要な道であり、歴史的背景や交通の便、宿場の存在など、当時の人々の生活に深く関わっていました。

もう一度検索